日本製薬団体連合会(日薬連)は、医薬品の原薬、原材料の国内生産回帰を図るうえでの課題を洗い出し、提言としてまとめた。優先順位の高い医薬品の原薬などに関しては製薬企業間で協力体制を敷く必要があると指摘。ケースに応じ、政府も巻き込んだ官民コンソーシアム設立の必要性を説いた。国内で生産が難しい場合は日系企業の海外子会社で実施すべきともした。

 26日夕に厚生労働省が開催する有識者会合「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」で日薬連品質委員会の蛭田修委員長が報告する。海外依存度の高い原薬や原材料などサプライチェーン(SC)に起因する医薬品の供給途絶問題が続くなか、日薬連としてプラントや生産技術などの課題を整理し、解決に向けた方向性を示した格好だ。

 原薬を始めとしたSCの国内回帰を実現するには、企業1社だけでの取り組みでは難しいというのが前提。そのうえで、日本での製造設備確保や生産コスト増大などに対して、政府によるどのような支援が欠かせないかを議論し、具体的な想定も盛り込んだ。

 まず医療現場で重要度の高い医薬品を「キードラッグ」に位置付け、さらにそのSCを分析し、途絶リスクを評価した。1つの国・地域によって独占されている原料や工程は「リスクが高い」と判断。国内での工場設置など優先的な対応を行うこととする。

 設備投資にかかる費用も検証した。例えば原薬からの一貫製造では総額150億~300億円、合成など一部工程では同40億円以上と試算。負担を減らすためには、企業連携による投資のほか、官民コンソーシアムの設立も選択肢として提示した。

 日系企業の海外子会社を活用する対応策も1つとする。日本で生産するよりも設備投資や製造コストを抑えることができるのがメリット。1カ国・地域への集中を回避できるともした。

 品目によるものの、原薬の国内生産を実施した場合は、その製造原価は現在の2~10倍に達することもある。そのため、企業が継続的に事業運営できるように、その分のコストを考慮した薬価の設定、国による買い取り、税制優遇措置の検討も求めた。

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