新型コロナウイルス感染症への治療効果が期待される抗インフルエンザ治療薬「アビガン」の純国産化に向けたサプライチェーン(SC)構築にめどが立ってきた。政府の要請に呼応し、化学、医薬関連企業が既存設備の転用や改良による原料~中間体の製造に乗り出す。錠剤生産まで大まかに5段階のプロセスの供給網がかたちを整える。政府は設備補助などの支援を進める一方、連携企業をさらに拡大してSCの安定化を図り、200万人分の備蓄につなげる。

 アビガンは富士フイルム富山化学が開発した抗インフルエンザウイルス薬。日常的に生産するものではなく、現在政府が新型インフルエンザ薬として備蓄するのは2017年に製造した分。

 この時は原料マロン酸ジエチル、2次原料アミノマロン酸ジエチル塩酸塩は中国から輸入、GMP対応の必要な原薬中間体から先の工程を富士フイルムグループが製造した。今回のSCも同グループを中心に構築される。

 マロン酸ジエチルはデンカが休止設備を再稼働させて生産。アミノマロン酸ジエチル塩酸塩はJNCが生産開始を発表したほか、立山化成なども検討中と伝えられる。4月末までに、宇部興産、アクティブファーマ、ダイト、シミックホールディングス(HD)、日医工などがSCの各段階への参加を表明、設備対応に着手している。

 富士フイルムは、原薬中間体、原薬の備蓄を使って錠剤生産に入っており、6月には7万人分が生産される。同社は7月には月産10万人分、9月には同30万人分に設備増強を予定。原料~原薬中間体供給を担う各社は、そこに向けた体制整備を急ぐ。

 アビガンの各製造工程は、連続プロセスではなくバッチ生産。小ロットの反応容器で化学反応を繰り返して必要量を貯め、次の段階に進む。設備は徹底的に洗浄する必要があり、1~2週間かける工程もある。既存設備の改良で対応する場合、反応容器の耐酸性を高める特殊加工も必要になる。

 こうした事情からSC全体の整備にはなお時間を要するが、各社は他製品の要員を振り向けるなど懸命の対応で早期の生産開始を目指す。

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