アンジェスが開発中の新型コロナウイルスワクチンについて、最初の臨床試験の速報データが明らかになった。30人規模の試験で、抗体ではなく免疫細胞自体が直接ウイルスを攻撃する作用(細胞性免疫)の方が強い傾向だった。国内企業が開発したコロナワクチンで、ヒトの臨床試験データの報告は初。ベータ型(南アフリカ系)など変異株に対するワクチンも開発している。

 同社創業者でワクチンを共同開発している大阪大学の森下竜一教授が、このほど開催した日本医療研究開発機構(AMED)のシンポジウムで、昨年6月末から大阪の大学病院で行った第1/2相臨床試験(P1/2)結果を初めて報告した。2週間隔で2回投与した場合、液性免疫反応(抗体価の上昇)は10人中5人、細胞性免疫反応(免疫細胞からのサイトカイン分泌)は同8人で認められた。4週間隔の場合は液性免疫同7人、細胞性免疫同9人で、細胞性免疫による作用の方が高い可能性が示された。

 同社が開発するのはウイルスの遺伝子情報をプラスミドDNAに組み込んで投与するワクチン。DNAワクチンは、米ファイザー製などのメッセンジャーRNAワクチンと同様、液性免疫、細胞性免疫両方の効果が期待されている。森下教授は、「ファイザー製に及ばないが、他のコロナワクチンとは同程度の効果が期待できる」と評価した。今夏にも500人規模のP2/3結果が出て大規模なP3を始める予定。

 変異株に対応した開発にも着手。南ア型、ブラジル型、インド型に対応した修正ワクチンをそれぞれ開発中という。ダイセルが開発した皮内投与デバイスを使ったP1/2も行っている。

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