帝人はIT技術を活用した展示会活動を本格化する。新型コロナウイルスの感染拡大防止策として各種展示会の中止を余儀なくされるなか、7月に衣料素材のバーチャル展示会の開催を決めた。来場者を展示会場に呼び込む従来のプル型に加え、今後は魅力的なコンテンツを積極的に発信するプッシュ型の確立を急ぐ。マテリアル事業間や外部との連携で、2020年度内には新たなプッシュ型展示会の開催を視野に入れる。ウィズコロナの時代にあって、新たな生活様式に向けたソリューション提案に努める考えだ。

 新型コロナは素材提案にも大きな影響を及ぼしている。例えば繊維素材では、1年後のシーズンに向け注力素材を展示会で披露する提案法が取られている。しかし、繊維メーカー各社はコロナ禍で独自に開催を予定していた展示会の中止や延期を決定。帝人グループでも「ユニフォーム素材内見会」や「帝人フロンティア総合展示会」、「21(年)FW(秋冬)スポーツ素材展」など、4~5月に予定した展示会の開催を取り止めていた。

 今回、帝人が開催を決めた「バーチャル総合展」は帝人フロンティアの総合展を引き継ぐかたちで実行する。ウィズコロナの時代の「ニューノーマル(新常態)」の状況を見据え、特設サイト上に仮想ブースを設置し、オンデマンドで新素材や環境配慮素材などの提案を行う。バーチャル形式を活用した展示会は帝人グループとして初の試みだ。

 帝人では今後、ウェブによる情報発信を強化する考えを示す。例えば、「新型コロナによる外出自粛のなかでも、お客様や消費者の方に見ていただけるようなウェブによる情報発信をし続けている」(帝人)というプロモート素材のポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維「ソロテックス」に加え、新たに環境素材も追加していきたいという。得意とする環境配慮素材を広くアピールすることで、人気の高まるエシカルファッション需要を下支えしていく。

 さらに“攻めのプロモーション”の検討も進める。マテリアル事業を統括する帝人の小山俊也取締役常務執行役員は「IT技術を駆使したプッシュ型の展示会を自前で開催したい」と語る。マテリアル領域の各事業で展開するほか、帝人フロンティアなどのグループ会社やIT技術に優れた外部企業などとの連携で、今年度内にも新たな展示会の開催につなげていきたいとしている。

 具体的な案として小山常務執行役員は、自動車のCASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)を掲げる。なかでも注目するのが、シェアリング対応。ウィズコロナの時代には「例えば公衆衛生上の観点から、着せ替えが可能なシートの需要があるのではないか」との見方を示し、ウェブ展示会などを通じ「シェアリングに対して新たなアプローチを試みたい」と話す。人工知能(AI)や5G(第5世代通信)など最新技術を駆使しながら、新たな提案方式を早期に確立させる考え。(加藤木学)続きはこちら

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