オーダーメードメディカルリサーチ(OMR、千葉県柏市、村上康文代表取締役社長)は、新型コロナウイルス対策に力を入れている。得意の抗体作製技術などを生かし、高感度で定量的な解析を実現した抗体検査システムを開発し医療機関向けのサービス提供を開始。PCR検査の代替を可能とする抗原検査システムも開発しており、年内に臨床試験を開始する予定。並行して治療薬として抗体医薬も開発し、2021年の早い時期の臨床試験入りを目指している。

 OMRは東大柏ベンチャープラザを拠点とするバイオテックベンチャー企業。抗体医薬の標的分子を飛躍的に拡大させる膜たんぱく質抗体の作製技術「LYMAXYS」を軸に抗体医薬の開発支援事業を推進してきた。新型コロナウイルスについては「1月の段階でパンデミック(世界的大流行)を予測、いち早く診断システムと抗体医薬の開発に着手した」(村上氏)。

 抗体検査システムはユーグレナ、リバネスと共同開発。抗原の調製から判定基準の設定までを自らが行い、日本の実情に即した解析系を確立した。抗原はN(ヌクレオカプシド)たんぱく質とS(スパイク)たんぱく質の両方を用いて最適化、200種類の患者検体によって抗体検査に適していることを確認した。これをベースに標準抗体を作製するとともに判定基準を設定。発症後11日目以降でPCR陽性の検体は100%捕捉でき、PCR陰性の検体もすべて陰性と判定できた。

 抗体検査システムで用いるのは免疫学的測定法として知られている抗原ELISA法を採用。96ウェルプレートを使うことによって1日当たり数千検体の解析が可能となった。

 抗原検査システムでは、村上氏が2002年に設立したバイオマトリックス研究所(BMR)で確立した高性能抗体作製技術を活用。BMRの抗体を使ったインフルエンザ診断キットは従来に比べて測定時間が大幅に短縮されPCR法に匹敵する高感度を実現したことなどが評価され国内80%、世界60%と高いシェアを有する。

 今回、突然変異の確率が低いNたんぱく質を抗原とするモノクローナル抗体を作製、診断用の抗体候補を絞り込んだ。「PCR法のように偽陽性が問題になる可能性は極めて低い」。診断キットメーカーと試作品の開発をほぼ完了、早ければ11月にも臨床試験に入る見通し。

 抗体医薬の開発に向けては「がん抗体などで培った優秀な抗体を作り出す技術・ノウハウを持っている強みを生かす」。その基幹技術がLIMAXYS法と強力な免疫応答を誘導する複合アジュバント免疫法。例えば大腸がん向け抗体医薬「アバスチン」と同じ標的に対して結合力が1万倍の抗体を作製した実績がある。

 OMRはSたんぱく質に結合する抗体のほか、細胞側受容体に結合する抗ACE2抗体の2種類を作製。細胞側受容体に結合する抗体は膜たんぱく質抗体で、これを作製できるのはOMRだけだという。ウイルスが細胞内に侵入するための受容体の抗体を作製すればウイルス変異に対する防衛力が高まる。これらの同時投与によって効果を高めることが可能になる。

 OMRはマウスを使って抗体を作製した後、ヒト型化して薬効の確認を進めている。年内には動物実験に入る予定で、その結果を踏まえて来年には臨床試験を始めたい考え。

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