キリンホールディングス(HD)が免疫機能の維持に役立つ独自素材の「プラズマ乳酸菌」で新型コロナウイルスに対する研究を加速させている。国立感染症研究所と行った試験管内の試験では、プラズマ乳酸菌の作用によってウイルスの複製増殖を低下させることを確認。長崎大学では新型コロナ患者に対するプラズマ乳酸菌を用いた特定臨床研究をスタートさせた。新たな予防、治療法の一つになることを期待し、長年蓄積したプラズマ乳酸菌に関する知見と技術を生かす。

 新型コロナに対するプラズマ乳酸菌の基礎研究に共同で取り組む国立感染症研究所とは、新たにプラズマ乳酸菌を免疫細胞の一種であるプラズマサイトイド樹状細胞に作用させ、その培養上清に新型コロナウイルスの増殖抑制効果があることを確認。長野県で3~5日に開催された第25回日本ワクチン学会学術集会で発表した。

 プラズマ乳酸菌未添加(pDC単独培養)の培養上清で処理した「アフリカミドリザルの正常腎臓由来細胞株(Vero細胞)は、未処理のVero細胞と同等のウイルス複製増殖を示したのに対し、プラズマ乳酸菌を添加したpDC培養上清で処理したVero細胞では、48時間時点で顕著なウイルス複製増殖の低下が認められたという。

 キリンHDは「今回の研究結果は試験管内の反応に関するものであり、この結果だけで新型コロナウイルスに感染したヒトに対する効果があるとは言えない」と前置きしたうえで、「これまで安全性の高い食品素材として使用してきた実績のあるプラズマ乳酸菌が、新型コロナに対するポテンシャルを示唆したことは食品とは異なる次元への萌芽的な発見」と話す。プラズマ乳酸菌が新型コロナに与える影響について、今後も国立感染症研究所と共同で研究を進めていく考えだ。

 一方、長崎大学では新型コロナウイルスへの感染が明らかとなった無症状者および軽症者を対象とした臨床研究が今月から始まった。プラズマ乳酸菌を含むタブレット(4000億個/日)、または含まないタブレットを14日間、それぞれ50人に摂取してもらい、症状が緩和されるかどうかを調べる。

 「長崎大学はその地理的、歴史的背景から熱帯医学、感染症、放射線医療科学分野における卓越した実績を有しており、感染症領域において日本では他の追随を許さない教育研究拠点」とし、「これから臨床研究を行うため、現時点で効果は実証されていないが、しっかりと検証していく」(キリンHD)とコメントしている。

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