新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、スマートグラスの引き合いが強まっている。現状、ほとんどの企業が国内外の出張禁止を打ち出しており、工場の保守などで作業者が現地に赴くことができず、代わりにスマートグラスを用いて遠隔作業を支援するケースが増えている。さらに巣ごもり需要として一般消費者向けには、スマートグラスで動画を鑑賞するニーズも拡大中。大手化学メーカーも揃って導入準備を進めており、ポストコロナの工場が大きく様変わりしそうだ。

 コロナ対策により人の移動が制限されたことで、遠隔で技術支援できるスマートグラスに注目が集まっている。スマートグラス大手のセイコーエプソンは「1~3月期は前年に比べ大きく伸びた。業務用、一般消費者用とも中国で引き合いが強まっている」と好調ぶりを口にする。海外工場の保守業務で作業者が渡航できないため、日本から技術支援する目的で活用するケースが増えているという。

 同社は現地ソフトウエアベンダーと組み、最適なアプリケーションを提供しつつスマートグラスのニーズ拡大に対応している。北米では昨年から中小企業向けにパッケージ商品のサブスクリプションサービスを開始。現在はコロナ対策で対象を広げ展開中だ。

 巣ごもり需要も好調だ。とくに中国で動画観賞用の販売が増えており、市場拡大につながっている。

 NTTドコモと協業し、遠隔作業支援用スマートグラスを展開するのはサン電子。「3月から問い合わせが増えている」として、需要増に対応中だ。展開するサービスは5G(第5世代通信)環境を見据えており、さらに拡大が期待できる。そのほかソニーなども業務用スマートグラスを手がけている。

 使用する側も効果を実感しているようだ。以前から防爆スマートグラスを導入しているサン・ペトロケミカルは「スマートグラスを介して図面などをやり取りすることで、対面する必要がなくなり、ソーシャルディスタンスの確保に役立っている」。もともとは休日・夜間の異常時の使用を想定していたが、足元のテレワーク推進で使用頻度が高まっている。

 大手化学メーカーも導入準備を進めており、「昨年度からテストを始め、今年度、本格運用に取り組む」(三菱ケミカル)、「実証実験を通じてセキュリティを確保しながら作業支援する方法を確立した。今年度から国内全工場でテスト運用に入る」(三井化学)、「もともと使用しており、出張禁止を機に幅広い活用を模索している」(旭化成)。コロナ対策を経て、スマートグラスが本格普及すれば、作業現場の新しいかたちがみえてくる。

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