【バンコク=岩﨑淳一】タイの化学品や製油所の製造設備建設が、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けている。立ち上げ作業を担う外国人技術者などの入国や主要機器の納入で遅延が生じた。完工の後ろ倒しを避けるため、急ピッチで各工事が行われているが、PTTグローバルケミカル(PTTGC)が建設中の酸化プロピレン(PO)プラントなどは稼働開始が当初予定より遅れる。

 PTTGCはラヨン県で、ナフサ分解炉(生産能力はエチレン年50万トン、プロピレン年26万1000トン)、PO(年20万トン)を建設中。さらに三洋化成、豊田通商との合弁で事業化するPO原料に用いるポリオール工場(ポリエーテルポリオール年13万トンなど)の新設工事も進めている。ナフサ分解炉は2020年末、POは20年7月、ポリオールは8月に商業生産に乗り出す予定だったが「すべて第4四半期(10~12月)に稼働開始となる見込み」(PTTGC)。

 タイは3月下旬に新型コロナの感染を抑え込むためロックダウンを実施し、4月4日から国際線旅客機の乗り入れを全面的に禁じた。7月1日から入国許可証(COE)を取得した商用目的などの外国人を輸送する特別便の乗り入れを許可したが、技術者やエンジニアが入国できない状況が続いたため、一部の新設プラントは試運転が遅れ工程が滞った。

 バイオ化学品を手がけるPTTGC子会社グローバルグリーンケミカル(GGC)がナコンサワン県でバイオコンプレックスを建設中だが、主要機器の到着が遅れた。同コンプレックスはタイ製糖会社カセート・タイ・インターナショナル・シュガーとの合弁で、エタノール製造設備などを21年第1四半期(1~3月)に完成する予定だったが、21年第4四半期(10~12月)にずれ込む見通し。

 タイオイルがチョンブリ県シラチャの製油所で常圧蒸留装置、残油水素化分解装置、硫酸設備などを新設するクリーン燃料プロジェクト(CFP)も新型コロナの影響を受け一時工事が遅延した。作業員の増員などで遅れを取り戻す計画で、商業運転開始時期は22~23年で変更していない。

 製造設備が完工し稼働を開始しても、世界経済の停滞が長引き苦戦を強いられる可能性はある。しかし、プラント稼働の遅延は借入金の返済計画などにも影響が及ぶ。コロナ禍以前に想定した事業環境とは異なるが、各プロジェクトは遅れの幅を最小限にすべく完工を目指す。

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