テルモの佐藤慎次郎社長は新型コロナウイルスの感染拡大で社会のあり方が変わりつつあるなか、医療のパラダイムシフトとインフラを支える製品の再評価が進むとの見方を示した。元に戻るのではなく、ニューノーマル(新常態)に適応した変革を加速し「ポストコロナの世界においても医療現場から真に必要とされる企業であり続ける」と強調。一変した経営環境にいち早く対応し、持続的な成長に取り組む。

 電話形式で開いた決算説明会で佐藤社長が今後の方向性を示した。パラダイムシフトの例として挙げたのが、医療経済性やデジタル化だ。

 医療財政のひっ迫が叫ばれるなか、医療経済性の要請がさらに強まり、一般社会でテレワークが急速に進んだように医療でもデジタル化が進むとみる。そのうえで「従来の製品イノベーションに加え、ソリューション型のビジネスモデルに一層注力する」と力を込める。

 一方の医療インフラは近年、革新的で先進的な治療製品がもてはやされてきた。先進国で「安全・安心」、「感染予防」は終わったテーマとされがちだったが、今回のコロナ禍で状況は大きく変わっている。医療機関で感染対策への投資が増えるなか、テルモには提案材料を多く持つ強みがある。

 優先度の見直しに対応するため、全社横断的なプロジェクト「感染対策イニシアチブ」(仮称)を近く立ち上げる考えを明らかにした。輸液剤などの「ホスピタルカンパニー」を中心に、医療従事者向けの感染対策情報を発信してきたが、今後はこの活動を感染対策イニシアチブとして進化させるという。

 点滴関連や手指消毒剤など医療インフラとなる製品を広く提供するテルモにとって、感染対策は重要なテーマといえる。50年以上前の使い切り注射器や真空採血管の普及をはじめ、病院経営に入り込んだコンサル提案をし続けてきた。

 佐藤社長は「過去の幅広い蓄積のうえに展開できるテルモの得意分野で、バリュープロポジション(企業に求められる価値命題)を示していきたい」と話す。感染対策という軸で進化させ、中長期的な企業価値の向上につなげていく。

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