ペプチドリームは、独自の特殊環状ペプチドを使った新型コロナウイルス感染症治療薬「PA-001」を飲み薬としても開発する。経口剤として投与しても高い血中濃度を維持できる可能性を動物試験で確認した。先行する点滴製剤で得ている実験データを活用することで開発を加速し、最短で2023年にも実用化できるとみている。感染拡大が懸念されている新たな変異株「オミクロン株」にも有効な可能性は高いという。29日の研究開発説明会で明らかにした。

 液剤として開発しているPA-001を粉末化し、カプセルに封入して投与する方法などを検討している。イヌを使った薬物動態試験で、経口投与して24時間後も高い血中濃度を維持するデータを得た。基本的な非臨床の毒性試験は先行する静注製剤で確認ずみで、消化器内の代謝データなどを追加すれば早期の治験開始が可能とみている。舛屋圭一副社長は「注射剤から経口剤にブリッジする開発ができれば、最低限のエフォートで早く実用化できる」と話し、最短で来年中に治験入りし、23年中の実用化も可能との見方を示した。

 点滴静注剤は来年1月中旬から最初の臨床試験を始める。3月末には完了予定。当初の計画より1カ月ほど治験入りが遅れたが、「来年内に使えるようになるのは無理な話ではないだろう」(舛屋副社長)と見込む。ウイルスが細胞内に入るのを阻止する作用機序であるため、予防的な効果も期待している。実現すれば、予防も可能な飲み薬になる。

 オミクロン株にも有効な可能性は高いという。コロナウイルス感染の足場となる「スパイクたんぱく質」は「S1」「S2」の2領域で構成されるが、同剤が結合する場所はS2領域。オミクロン株を含む変異株の変異場所はほとんどがS1領域であることから、同剤の薬効は変異の影響を受けにくいという。

 開発自体は、同剤の事業化のために設立した合弁会社「ペプチエイド」が実施する。ペプチドリーム、富士通、みずほキャピタル、竹中工務店、キシダ化学が出資する。

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