ペルセウスプロテオミクス(東京都目黒区)は、新型コロナウイルス感染症の重症化予測キットの開発に挑む。同社が販売している血管炎症マーカー「ペントラキシン3」(PTX3)検出試薬を新型コロナの重症化予測に応用する。実現すれば、効率的な治療が可能になり、死亡率の低減や、医療崩壊の防止につながると期待される。現在、企業と協業してキット化を進めており、1年以内の上市を目指す。

 新型コロナ感染症では、ウイルスが肺から血管を通って体に広がり、全身で炎症を起こすサイトカインストームという状態に陥ることが重症化の大きな要因となる。足元、企業や大学などで、重症化を予測するさまざまな炎症マーカーおよび検出方法が研究されている。

 PTX3は、血管の炎症が発生すると血管内皮などから放出されるたんぱく質。炎症マーカーのCRPなどと比べて感度が非常に高く、とくに全身炎症による重症化のリスクが事前に分かる。新型コロナ感染症とよく似た全身炎症を引き起こす川崎病では、重症化の前に必ずPTX3が急速に増加することが分かっている。

 ペルセウスプロテオミクスは、抗体医薬品の研究・開発を手がける東京大学発の創薬ベンチャー。マウスを使って作成したモノクローナル抗体を用い、PTX3を高感度で検出することに成功した。これを利用した検出試薬を開発し、2008年から販売してきた。SRLなどの臨床検査機関で測定サービスとして提供され、複数の疾患について医学研究への利用実績がある。

 同社は、企業と協力して、PTX3と新型コロナ感染症の重症化の相関関係を調べる臨床研究を進めている。重症化のサインとなる検出量や、検出されてから重症化までのタイムラグなどについて、医師の協力を得て、実際の患者で確認している。

 新型コロナ感染症の重症化を事前に予測できれば、死亡や後遺症のリスクを減らせるほか、治療の優先順位を的確に決定でき、医療崩壊の防止も期待できる。また、ワクチンや治療薬はそれ自体の安全性が問題になるが、重症化予測は検体をとって調べるだけなので、低リスクで治療効率をあげることができる。

 今後は体外診断薬として1年以内の承認、上市を目指し、協業企業と臨床試験を進める方針。コンパクトかつ短時間で検査できるキットを開発し、新型コロナの陽性判明後、直ちに重症化の検査ができるよう幅広い普及を目指す。

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