新型コロナウイルス感染防止策として広がるテレワーク。東京都が5月に発表した調査によると、都内企業(従業員30人以上)のテレワーク導入率は62・7%と3月時点の調査より2・6倍上昇している。一方、日用品・化粧品各社は「働き方改革」などでコロナ禍以前からテレワークに取り組み、緊急事態宣言解除後はさらに促進する動きもある。各社が導入した狙いやメリット、コロナ収束後の方向性などを取材した。

 ユニ・チャームは、2017年秋からテレワークを一部の部署で導入した。段階的に対象を広げ、現在は生産部門などを除く国内で2000人前後の従業員が使える制度だ。社員の仕事と家庭や健康などを充実させ、働きがいを持ってもらうことが大きな狙いにある。

 基本的にテレワークは月4回まで。業務開始前、終了後の報告を徹底するほか、できるだけグループ内でテレワークする人が重ならないよう調整している。インフラ面では、会社がノートパソコンを支給し、クラウドサービスを使用、通信環境は会社が用意する。また、オンライン会議や各社員の予定が共有できる「ラインワークス」などのコミュニケーションツールを導入している。

 同社には「沈思黙考」を推奨する独自の企業文化があり、テレワークをこの時間にあてている社員も多い。集中しやすい働き場所を選び、創造性やアイデアが重視される仕事の生産性向上につなげている。テレワーク中の社員に対する“暗黙のルール”は、極力電話しないこと。誰がテレワークしているか共有され、不急でなければメールやチャットで連絡する。

 テレワークのメリットについて同社の社員は「往復で2時間かかる通勤時間の削減が大きい。空いた時間は語学学習や家族との時間にあてている」と仕事のモチベーション向上にもつなげている。他方、オンラインのやり取りに当初は取っつきにくさを感じる社員もいたようだ。

 テレワークを実施する日は基本的に残業不可。正確な数字ではないものの、社員1人が月4回テレワークしたとして10時間前後の時間外労働を削減できるもよう。人件費の点でも会社側にメリットをもたらす。

 今年は新型コロナの影響で、2月末から生産部門などを除く部署が原則在宅勤務となったが、インフラ整備やコミュニケーションツールも定着していたため、大きな支障はなかった。

 ただ長期のテレワークは前例がなく課題も見えてきた。社内アンケートからは「孤独感」などメンタルを心配する声もあったようだ。対策の一つとして、従業員同士でオンライン懇親会の推奨と、補助金(1人最大月3000円)を出すことを決めた。在宅勤務で少なくなりがちな従業員同士のコミュニケーションを補い、孤立感や不安を取り除く。6月まで続ける。

 6月以降は、月4回が上限だったテレワーク回数を週2回に増やすことが決まった。「自身が最も成長しやすい環境を自ら考えつくり出すような働き方を視野に入れている」(同社)。(随時掲載)

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