2030年に向け「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニー」をビジョンに掲げるライオン。実現のため19年は働きがい改革を宣言し、ワークスタイルの変革も実行。テレワークは同年2月から生産部門などを除いた職種で原則週1回に拡大、手続きを簡素化した。今後は新たなフレックス制度や在宅勤務制度の拡充、会議・決裁手続きの柔軟対応でリモートワークを活用した働き方を加速していく。

 同社は15年からテレワークのトライアル運用を開始、検証と並行し社内周知を進めてきた。活用を促す契機は国が東京五輪の交通混雑緩和を目的で主導する「テレワーク・デイズ」だった。同社は19年7~8月に参加し、対象職種の1回以上利用者は45%へ上昇。年末時点では半数以上が利用した。7割以上が業務の進め方、モチベーションでプラスの効果を実感したようだ。一方で月1回以上の利用者は15%と継続性には課題が残った。

 今年は新型コロナウイルスにより生産部門を除く部署が原則在宅勤務へ移行。利用回数の制限をなくし、コアタイムのないフレックス制度など緊急対応を取った。5月時点で対象者の利用率は96%だった。

 社員へのテレワーク調査からメリット・デメリットがみえてきた。プラス面は優先順位の明確化、ウェブ会議やペーパレスによる効率化など。マイナス面は、縦・横の“ちょっとした会話”の減少、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)フォローの難しさ、また単身者の孤立感なども挙がった。

 同社人材開発センターの担当者は、テレワークの課題について「仕事もコミュニケーションも意識してアウトプットを増やす必要がある。コミュニケーションツールのリテラシー向上も重要。中長期的な視点では、会社との一体感の醸成や健康維持、メンタルケアも欠かせない」と話す。

 働き方と並行しワークマネジメント変革にも取り組む。自律的に知識や経験を習得するための人材育成支援として「ライオンキャリアビレッジ」を設けている。2000以上のコンテンツを揃えたeラーニング講座と専門知識を持つ従業員や社外専門家が主導する少人数制のケース討議を複合した学びの仕組みだ。コロナ対応の勤務体制では自発的な学びが増加し、直前1~2月の利用平均に比べ、4月の参加人数は通常時の3倍以上、視聴数は5倍以上だった。

 また、今年から個々の意思と行動でキャリアをつくり上げることなどを目的とした「キャリアデザインサポート制度」も導入。年代別のキャリア相談や副業を従来の許可制から申告制に変更。会社は副業の紹介も行い、そこから得た知見を社内へ還元することを狙う。

 効率的な働き方と能力を最大限発揮できる制度で従業員の働きがいをサポートし、生産性向上や新価値創出へつなげていく。(随時掲載)

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