国立国際医療研究センター(NCGM)は、新型コロナウイルス治療薬「レムデシビル」(開発元・米ギリアド・サイエンシズ)を用いた臨床試験プログラムで、JAK1/2阻害剤「バリシチニブ」(米イーライリリー)と併用する試験を開始する。米国立衛生研究所(NIH)と共同で実施する医師主導治験。日本でも症例登録を始める。バリシチニブは、新型コロナを重症化させる免疫暴走を抑制し、ウイルスの増殖を抑える効果もあると期待されている。無症状・軽症患者を対象に、吸入ステロイド薬「オルベスコ」(帝人ファーマ)の臨床試験も始めた。

 NCGMは、NIHが立ち上げたレムデシビルの医師主導治験「アダプティブCOVID-19治療試験(ACTT)」に参加し、日本で治験を行ってきた。全体で約1000例、NCGMからは15例が登録された。中間データでは、回復までの時間をプラセボ群より約3割短縮できる結果を得ている。これに続く臨床試験「ACTT2」として、レムデシビルとバリシチニブを併用する試験を始める。海外では5月20日から症例登録が始まり、224例が登録ずみ。最終的に約1000例の登録を目指す。日本も近く登録を始める。

 バリシチニブは、関節リウマチ治療薬「オルミエント錠」として日本でも販売されている。炎症性サイトカインのシグナル伝達を阻害する作用があることから、新型コロナでサイトカインが過剰に産生される免疫暴走(サイトカインストーム)を抑制する効果が期待されている。また最近、ウイルスの増殖を抑制する可能性も指摘されている。

 NCGMでは、オルベスコ(一般名・シクレソニド)の国内臨床試験も実施中。同剤を7日間投与した後の肺炎症状を観察する。無症状・軽症患者90例を組み入れ、対症療法群と比較する。これまでに26例を登録しており、独立データモニタリング委員会から安全性の懸念がないと評価された。10月末まで実施予定。

 NCGMは、回復患者から得た血しょうを用いた治療法や、新規化合物の開発も始める。化合物は試験管レベルで抗ウイルス活性があることを確認した段階という。

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