スイス製薬大手ロシュの日本法人であるロシュ・ダイアグノスティックスは1日、メッセンジャーRNA(mRNA)などの製造用原料として「N1-メチル-シュード-UTP」を発売すると発表した。既存品と比べて、目的とするたんぱく質を多く生成するなどの特徴を有する。新型コロナウイルスワクチンの国産化に向けて開発が進むなか、製薬会社や開発・製造受託企業(CDMO)の需要を取り込んでいく。

 1日に発売したN1-メチル-シュード-UTPは、RNA合成原料のウリジン三リン酸(UTP)のウリジンを、N1-メチルシュードウリジンに置き換えた修飾品。研究開発用の少量から、製造用のバルク容量まで供給が可能。2022年半ば以降、医薬品製造・品質管理基準GMPグレードとしての販売を予定している。

 mRNAは遺伝情報を持つ核酸成分で、通常4つの塩基配列のうち一つがウリジンで構成されている。ただ、通常体内の免疫反応により炎症を起こしてたんぱく質が作られにくくなるため、ワクチンや医薬品として開発されているmRNAは、炎症を抑制し目的たんぱく質を多く生成できるようウリジンの代わりにシュードウリジンが用いられている。

 今回の上市品のように、N1-メチルシュードウリジンを含む修飾UTPで製造したmRNAは、通常品と比べて炎症反応が低減されるだけではなく、シュードウリジンを用いたものよりもより多くのたんぱく質を生成することが可能という。

 日本で新型コロナウイルスワクチンの開発が進んでいるほか、mRNAをがんなどの治療薬に応用する研究開発も活発化している。製薬会社や創薬ベンチャー、医薬品CDMOで強まる原料ニーズに対応する。

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