三井製糖は植物由来乳酸菌の代謝を生かした機能性食品の原料について、新型コロナウイルス禍のセルフケア対策素材として提案する。コロナの影響が長引くなか、口腔ケアの重要性やメンタルヘルスの問題に注目が集まっていることに着目。有用性を裏付けるエビデンスを示すことで各製品の採用を働きかける。同社は健康寿命の延伸に貢献する素材などのライフ・エナジー事業を成長分野の一つと位置づけている。インターネットを使った販促も強化し、2021年度は前年度比3倍の売り上げを目指す。

 三井製糖が扱う植物乳酸菌発酵果汁粉末は植物由来の乳酸菌を使い、果汁で乳酸菌を培養。乳酸菌発酵させた果汁を粉末化するため、菌体と多様な代謝産物を含む。19年には広島大学内に「未病・予防医科学共創研究所」を設置するなど同大学との研究を通じて有効性や安全性を検証しているのも強みだ。

 例えば、ニンジンの葉から単離した乳酸菌をみかん果汁で発酵させて粉末化した「G-15」は、GABAを産生する酵素を保有している特徴がある。GABAの機能として知られるリラックス効果や高血圧の改善作用を動物試験で確認。一方で菌体自体にも生理機能があり、免疫能の指標といわれるIgAの産生を誘導することが明らかになっている。

 ほかにも、マタタビの花から採取した乳酸菌をパイナップル果汁で培養した「BM53-1」は、代謝物に生理機能が認められた菌株として広くアピールしていく。酵素代謝物が虫歯菌であるグルカンの形成遺伝子を制御し、口腔内のバイオフィルム形成を阻害するという。

 コロナ禍で新規提案が難しくなるなか、非対面型の営業手法を強化。自社の製品群を分かりやすく紹介するオンラインブースを新たに立ち上げた。質問はチャット機能を使ってリアルタイムで受け付けており、「対面の説明会に比べて気軽に相談できる利点もある」(ライフ・エナジー事業本部)と期待する。

 富士経済によると、生物由来有用成分・素材市場は19年に約1980億円で、27年には19年比23%増の2435億円に成長する見通し。新型コロナ感染拡大の影響で、足元では精神的な不安や運動不足による睡眠障害をはじめ、外出自粛によるコロナ太り対策からダイエットやメンタルケア関連の需要が伸びている。

 製糖最大手の同社は4月、大日本明治製糖と経営統合。1月には日本甜菜製糖と資本業務提携も結ぶなどして基盤事業の強化を図る一方、成長領域への経営資源の再配分を重点課題に掲げている。コロナ禍で食品による免疫機能の維持や向上に対する機運も高まるなか、抗肥満作用を訴求する「LP28」なども含めた素材の認知度を高めて取引拡大に弾みをつける。

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