上海市の経済・情報化委員会は13日、市内重点製造業の活動再開状況を発表した。同委によるとこれまでに、年間売上高2000万元(約3億8000万円)以上の製造業9000社のうち、約5割に当たる4400社が生産を再開。化学や半導体のメーカーなどロックダウン後も生産を維持していた企業は、物流網回復などを背景に稼働率を高めている。自動車産業も長江デルタ(上海市、江蘇省、浙江省)の企業連携などを通じてサプライチェーン機能を徐々に回復、上海汽車など大手OEMが操業を再開した。

 上海市ではコロナ感染増加を受け3月末に都市封鎖が敷かれた。4月半ば以降、製造業は防疫策を講じ、また当局が定める活動再開の諸条件を満たしつつ、徐々に生産を再開し始めた。化学産業では、上海化学工業園区(SCIP)内で工場を運営する中国石化(シノペック)系の高橋石化が現状9割稼働、独BASFは複数ある生産設備の平均稼働率を7割に戻した。

 市当局によると5月半ば時点で、ホテルなど隔離用施設や病院を除き感染者がおらず、外出も可能な「社会面基本清零区域」が増えつつある。同区域に含まれる金山、青浦、奉賢、松江の4区では製造業の操業再開率が平均7割を上回っている。市が3度に分けて発表した、とくに早期生産再開を促す計3000社の再開率は現状7割以上。最初にリストアップされた666社に限ると95%を超えた。847社ある外資は8割が生産を再開した。

 主要産業のうち自動車は、上海汽車乗用車、上汽通用汽車(上海汽車と米GMの合弁)、上汽大衆(上海汽車と独フォルクスワーゲンの合弁)、米テスラの4社が13日までに通常生産を再開、安定稼働を続けている。素材・部品メーカーも計1100社以上が工場を稼働。輸出も再開され、4月以降テスラは4900台、上海汽車は1万5000台をそれぞれ輸出した。

 半導体は現状90%以上の稼働率を維持し、市内に工場を置く大手ファウンドリーのうち中芯国際集成電路製造(SMIC)と上海華虹集団、積塔半導体の3社はフル生産。製造装置や材料、パッケージなどのメーカーも相次ぎ生産を再開しつつある。

 医薬医療はCT検査機など主要医療機器の生産が継続され、工場稼働率も足元80%に上昇。ロシュ(スイス)の現地法人や君実生物医薬科技、上海迪賽諾生物医薬など製薬大手はフル生産に戻した。

 サプライチェーン正常化に向けた物流機能回復について市当局は、車両通行および労働再開許可証の発行を拡大しているとした。交通規制などによって化学や自動車産業では原料・部品の調達や製品供給の停滞が問題になったが、「長江デルタ内の省をまたぐ物流の貨物到達率は90%に達した」。

 当局は今後も防疫策を緩めることなく安全な生産再開のための支援を継続し、「コロナフリー工場」「コロナフリー工業団地」を増やす一方、製造業以外の企業も徐々に活動の正常化を図る方針。

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

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