中外製薬の板垣利明上席執行役員は、このほど開いた2020年12月期第3四半期決算説明会で、同社創製のバイオ医薬品「アクテムラ」の今期輸出額が1200億円に達するとの見通しを示した。治験など新型コロナウイルス感染症向けに引き合いが伸長しているためで、1~9月期の輸出実績は976億円となり、通期で予想していた908億円を早くも突破した。

 戦略提携先のスイス・ロシュを通じて輸出しているアクテムラは、過剰な免疫反応であるサイトカイン・ストームに改善効果を発揮するとして、海外を中心に新型コロナウイルス感染症治療薬として使われている。このため、今春以降、引き合いが増している状況。足元ではインドや南米向けなどにも広がりをみせている。

 ロシュが重症患者に対して行った治験では主要評価項目は未達だったが、臨床現場での使われ方に変化はないといい、「いぜん強いモメンタム」(板垣上席執行役員)。現在、ロシュが進めている米ギリアド・サイエンシズの抗ウイルス剤「レムデシビル」との併用試験の結果が出るまでは維持するとの見立てを示し、「少なくとも年内は続く」とした。

 一方、日本での新型コロナウイルス感染症を対象とした申請は、レムデシビルとの併用試験の「結果をみてから」(広瀬稔R&Dポートフォリオ部長)として、時期を21年に改めた。これまで年内を目指す方針を掲げていた。

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