新型コロナウイルスの世界的な広がりで深刻化している医療用ガウンの不足解消に向け、材料各社が相次ぎ供給体制を整える方向にある。コロナとの闘いが長期化する様相を呈するなか、医療現場で欠かせないガウン、ドレープ、マスクといった医療物資の安定供給に向け、材料各社は既存設備や既存製品を有効活用する。

6月までに900万着

 帝人は今月から医療用ガウンの生産に乗り出す。6月までの間に900万着を製造する予定。全量を日本政府に供給するもので、グローバルの製造拠点を活用する。生産するのは、手術用に用いるサージカルタイプと、検査や診察など手術用以外に着用するアイソレーションタイプ。生産比率は、サージカルタイプが72%、アイソレーションタイプが28%。

 両タイプは、使用回数に応じて素材の使い分けを行う。高機能ポリエステルの織物素材は、繰り返しの洗濯が可能。高密度に織ったポリエステル生地に耐久撥水加工などを施した。一方、不織布素材のガウンは、使い捨て用としての着用を想定する。ポリエチレン(PE)のフィルムにポリプロピレン(PP)の不織布をラミネートした構造の素材を採用する。

 生産は日本国内や中国、アジア地域。国内は、帝人フロンティアが保有する福岡県大牟田市の工場で製造を進める。海外では中国やアジア各地域のグループ拠点や協力会社などの設備を活用する。

 さらに、ガウンの型紙については、電子データを公表し、各拠点で効率的な生産を行えるよう検討するとしている。

長繊維不織布供給

 旭化成も医療用ガウンや素材供給の検討に入った。タイで主に紙おむつ向けに生産するスパンボンド(長繊維)不織布を医療用ガウン向けに供給することや、関係会社や外部と組んでガウンの生産まで手掛ける両面で検討する。素材や縫製技術を生かして新型コロナウイルスの感染拡大にともなうガウン不足に貢献する姿勢を鮮明にする。

設備の活用を検討

 紙おむつ向けのPPスパンボンド不織布でアジア大手の三井化学は、国内で医療用ガウンやフィルターなど医療向けの供給を増やすため、紙おむつ向けの設備を活用できないか検討中だ。国内では名古屋工場のほか、100%子会社のサンレックス工業(三重県四日市市)でメルトブローン不織布を生産している。

フィルムの活用も

 住友化学は農業用フィルムを活用し、使い捨てタイプの医療用ガウン向けに供給を始めた。普段は農業用ハウスフィルムやマルチフィルムに使われる低密度ポリエチレン(LDPE)を製造するサンテーラ(住友化学84・6%、住化プラステック15・4%出資)をはじめグループ会社が加工し、日本政府が指定するガウン縫製メーカーに供給を開始。まずはガウン30万着分に相当する10トンを製造する。

 サンテーラの工場は千葉工場と九州工場。生産可能な縫製メーカーが増えれば、さらに供給を増やす計画だ。

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