厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症で生じる後遺症実態調査に関する中間報告を公表した。呼吸器と精神状態について実施し、一部では症状が長引き、生活の質(QOL)などに影響を与えていることが判明した。いずれも診断・退院から3~6カ月の症例が対象であることから、同省は継続調査を行い、後遺症に関してより詳細な実態解明・解析を進めていく方針だ。

 同省の支援の下、肺を中心とした呼吸器については高知大学の横山彰仁教授(日本呼吸器学会理事長)らが、精神面に関しては慶応義塾大学の福永興壱教授らがそれぞれ担当した。

 肺をはじめとした呼吸器の場合、中等症以上で退院から3カ月以上を経過した512例を対象に解析した。退院3カ月後のコンピューター断層撮影(CT)を分析すると、すりガラス影など何らかの変化が生じていた割合が54%と過半を超えた。また、重症度が高いほど肺機能の低下が長引くことも分かった。

 自覚症状でみると、発症初期と3カ月後で傾向が異なることも浮かび上がった。とりわけ「筋力低下」「息苦しさ」の2つの症状で、重症度に明確に依存していることも明らかになった。

 精神状態に関する後遺症では、昨年1月から今年2月にかけて入院した522例を対象に解析を加えた。その結果、「疲労感」「倦怠感」「息苦しさ」「筋力低下」「睡眠障害」「思考力・集中力低下」「脱毛」については、退院時に認めた患者の3割以上で、診断6カ月後も続いていることが判明した。そうした症状が一つでも存在すると、QOLが低下し、不安や抑うつを示す傾向が強まっているともした。さらに睡眠障害の自覚傾向も高かった。

 半面、症状の有無にかかわらず、診断6カ月後に行ったアンケート結果からは約8割で罹患前の健康状態に戻ったと自覚していることも分かった。そのため、今後、どのような症状がQOL低下や精神状態に影響を与えるかに関して検討していきたいとしている。

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