原油は当面激しい価格競争が続きそう。新型コロナウイルスの感染拡大が収束の兆しをみせないなかで協調減産体制が崩壊。サウジアラビア、ロシアなどの増産発表が追い打ちをかけて油価は1バーレル当たり30ドル割れの低位に沈む。市場関係者は6月初めに予定される石油輸出国機構(OPEC)総会、非OPEC産油国を含めた会合が、上昇・安定のきっかけになるかが次の焦点と指摘する。
 ナフサが相関関係を持つブレント原油先物価格は、3月17日の終値が28・47ドル。2016年1月21日の終値29・25ドル以来4年3カ月ぶりに30ドルを割り込んだ。足元も30ドル未満が続く。新型コロナウイルスの感染拡大による石油製品の需要減で1月末から下落基調だった状況に、協調減産体制の崩壊と増産発表が追い打ちとなった。
 協調減産の拡大・延長協議がOPECとロシアなど非OPEC産油国の間で決裂した直後、サウジ国営のサウジアラムコは指標となるブレント先物に大幅な割引を付けるかたちで値下げした。それだけでなく、4月以降の生産量(日量)を2月比約130万バーレル増の1100万バーレルとする方針を発表。その後、ロシア最大手のロスネフチが4月以降に30万バーレル増産することを明らかにすると、サウジアラムコは1200万バーレルへの引き上げを発表。さらに「ロシアから市場を奪うことを目的に欧州石油会社へ安値攻勢を仕掛けている」(市場関係者)。この間、アラブ首長国連邦も増産の意向を打ち出し、増産と価格競争が激化の一途をたどる。
 この影響がナフサや石化製品に及んでおり、3月上旬以降に下げ足をさらに強めてナフサ市況は1トン当たり200ドル程度、エチレンは560ドル程度まで下がった。
 今後は「協調減産体制の再構築を目指すことになる」というのが市場関係者の見方。野放図な増産や値下げは石油収入への依存度が高い産油国の経済に打撃を与える。「サウジの増産は自らも打撃を負うことになるが、油価の下落を容認することで産油国にダメージを与え、協調減産体制の重要性を改めて認識させる狙いがある」(同)。
 このため、6月初めのOPEC総会と非OPEC産油国との会合が、次の協調減産体制を話し合うタイミングとなる。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大は不透明な要素。長期化すれば新たな協調減産の効果が薄れるため、油価の回復・安定にかかる時間も長引くことになる。

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