国立がん研究センターとシスメックスは2日、新型コロナウイルスに感染したがん患者は健常な人に比べて抗体ができにくいことが判明したと発表した。抗体そのものの保有率には差がなかったが、がん患者は健常な人に比べ抗体量が有意に低かった。受けている治療法によっても抗体量に差があり、がんとの併発や抗がん剤治療が抗体量に影響を与える可能性が示唆された。今後、ワクチン接種後の抗体量推移やがん治療が抗体生成に与える影響を調べていく。

 両者は2020年8~10月にがん患者500人と健常人1190人を対象に、共同開発した試薬を使い抗体検査を行った。抗体保有率はそれぞれ0・4%、0・42%と差がなかったものの、抗体量についてはがん患者群の方が低いことが明らかになった。

 がん治療法ごとの抗体量比較では、抗がん剤治療の患者では抗体量が低い一方、免疫チェックポイント阻害薬を治療に用いた患者は抗体量が高かった。放射線治療、外科治療では抗体量に変わりはなかった。いずれも理由は不明としている。

 今後はワクチン接種後のがん患者の抗体量推移を測定していく方針。国立がん研究センター中央病院腫瘍内科の矢崎秀氏は、今回の結果から「がん患者はワクチン接種をしても得られる抗体数が少なくなる可能性がある。抗体量推移の結果によってはワクチン接種タイミングの工夫や追加の接種を検討すべきだ」とした。

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