<国際支援団体PFID・ポリシーディレクター・キャンディス・デマテイス氏>

 感染症領域の専門家や業界団体など30団体超による支援の下、将来のパンデミックに備えるイニシアチブ「感染症と戦うパートナーシップ(PFID)」が2020年に創設された。新型コロナウイルスワクチン接種や薬剤耐性(AMR)などの世界的な課題について取り組んでいる。PFIDのポリシーディレクター、キャンディス・デマテイス氏に、ワクチン接種の推進や国際協力の可能性について聞いた。

▼…ワクチン接種を忌避する人々がいるのはなぜでしょうか。

 「大きく分けて、関心はあるが忌避している人と、絶対に接種したくない人の2種類に分かれる。前者は副反応などに強い不安を感じているからで、個別に対話すれば理解し合える。副反応のために仕事を休むことを懸念している人たちもいる」
 「後者は接種しなくても、感染しても怖くないという、誤った情報を信じている人たち。私たちの反省点は、彼らが信じる誤った情報に対して適切に対応できなかったこと。誤解が放置されたことで、彼らはさらに接種を避けるようになった」
 「米国では思うように接種が進んでいなかったが、オミクロン株の感染拡大により、こうした人々の多くが自ら接種に行き始めた。とても興味深い展開だ」

▼…自分たちと根本的に異なる価値観や文化を持つ相手と、どう対話すればいいですか。

 「政治家や政策担当者がトップダウンで命令するのではなく、地元のリーダーやインフルエンサーにお願いして、コミュニティに根差した対話の仕方が必要。信頼できる身近な人から話をすれば、ワクチン接種の重要性は正しく伝わるはず」

▼…政治的な関係性を切り離して、パンデミック制圧に向けて各国・地域が本当に協力することは可能ですか。

 「国がまず自分の国を守るための政策を考えるのは当然なことで、政治的な思惑を完全に排除するのは難しい。自国のイノベーション研究を日頃から支援しているのは、国際的な競争力を持つためでもある。だが、近年認知されてきたAMR問題のように、国境を越えて協力し合える可能性は必ずあると思っている」

▼…率直に、新型コロナはいつ収束するでしょうか。

 「オミクロン株の流行前、日本はかなり近かったと思う。完全になくなるとは思えないが、ワクチン接種が進み、有効な治療薬が十分供給され、死亡者や重症患者が大幅に減り、従来のインフルエンザや風邪と同じような存在になった時、社会は正常化に向かうのではないか」
 (聞き手=赤羽環希)

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