新型コロナウイルス感染症の重症化を予測する検査薬の開発が進んでいる。塩野義製薬や富士フイルム和光純薬が承認申請や発売にこぎ着けた。未然に重症化を防げれば患者をいち早く救えるだけでなく、医療体制ひっ迫の回避にもつながる。

 塩野義製薬は検査キット「HISCL TARC試薬」について、新型コロナの重症化予測に関する適応追加の承認申請を4月16日に行った。アトピー性皮膚炎の重症度評価に使うキットで、症状悪化で上昇するたんぱく質ケモカインの一種「TARC」を測定する。

 昨年、国立国際医療研究センター(NCGM)が報告した研究成果を踏まえた取り組み。コロナ患者のTARCの血中濃度が基準値以下になると重症・重篤化することを突き止めており、早い段階で的確な治療を行ううえでのバイオマーカーとなり得るとしていた。

 ケモカインを測定する機能を持つ同キットも役立つ可能性があるため、塩野義は転用への検討に取りかかっていた。さまざまな慢性疾患でのTARC値を調べたところ、その値が低くなるものはなく、基礎疾患を有する患者でも重症化の予測が可能とみている。

 富士フイルム和光純薬は、コロナ重症化危険因子とされる遺伝子を検出する研究用試薬のキットを発売した。独自技術を応用したPCR法によりα1-アンチトリプシン(AAT)の遺伝子変異を簡便かつ比較的短時間で高感度に検出できる。日欧米などで販売する。

 AATは肝臓で合成される糖たんぱく質で、肺胞壁の障害を防ぐ作用がある。血中のAAT欠乏は、AATの遺伝子変異により引き起こされ、慢性閉塞性肺疾患につながる。代表的な遺伝子変異はPiSとPiZの2種類で、欧米の研究では両方とも重症化危険因子の一つである可能性が報告されている。

 開発した研究用試薬キットはこの2種類の遺伝子変異を高感度に検出できる。検体は唾液、口腔粘膜、鼻咽頭ぬぐい液を用い、汎用PCR装置で約100分で判定結果が得られる。価格は100反応用で8万円(税別)。大阪工場(兵庫県尼崎市)で作る。初回の生産量は50キット。

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