塩野義製薬の手代木功社長は11日に開催した決算説明会で新型コロナウイルス感染症に対して「かなりのリソースを投じていく」と語り、経営資源を重点的に当てる考えを示した。予防から診断、治療までの「トータルケアを実現する」との方針の下、検査キット、ワクチン、治療薬のそれぞれで取り組みを強化。このうち、ワクチンに関しては年度内の供給開始を想定していく。

 最も実用化に近いのが抗体検査キットで「1カ月以内」(澤田拓子副社長)に発売する。疫学調査向けを中心に提供する。年内の治験開始を計画中のワクチンは、1000万人規模の生産体制構築を急ぐ。設備投資は「100億~200億円」(手代木社長)を見込む。

 治療薬では、自社ライブラリーから見つけた化合物による研究開発を進めている。流行長期化などを勘案し、「コロナウイルス全体をカバーする治療薬が必要」(同)と強調。ウイルスそのものに作用するような治療薬の開発を目指す。

 新型コロナウイルスの流行にともなう事業への影響は、足元、抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」などの販売減、欧米での一部治験の停滞などに止まる。サプライチェーン(SC)も確保できており、「供給に支障はない」(同)。ただ、1年近く長期化した場合は影響が生じてくるため、週ごとにSCの点検を行っていることも明らかにした。

 3月末に公表した中国の平安保険集団との提携は、2カ月程度で細部を固め、「今期後半から合弁が稼働する見込み」(同)。まず塩野義の製品を中国・アジアに売り込むのに使い、さらに平安が有する医療データなどを創薬やヘルスケアサービスの開発に利活用する。

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