富士フイルム富山化学の山田光一執行役員はこのほど横浜市で開かれた展示会「バイオジャパン」で講演し、新型コロナウイルス感染症治療薬として適応拡大に向けた申請を行った抗インフルエンザ薬「アビガン」の事業戦略を示した。「エビデンスに基づく海外での拡販」「適応拡大」の2つを課題に掲げ、さらなるサプライチェーン(SC)整備やデータ蓄積に取り組む姿勢を打ち出した。

 バイオジャパン主催のセミナー「ポストコロナのビジネスモデル」に登壇、適応拡大申請にいたる治験の概要などを語った。

 山田執行役員は、新型コロナウイルス感染症に対するアビガンの検討を1月には「国立感染症研究所とともに議論」していたことを明らかにした。翌2月には日本でも観察研究がスタート。3月末には同社による治験も始まり、承認申請に向けた臨床データ蓄積を進めてきたことを説明した。併せて、アビガンSCの国内完結を目指し、化学各社などと「再生産交渉に追われた」と振り返った。

 海外展開については、7月に印大手製薬のドクター・レディーズ・ラボラトリーズなどとの連携を決定した。クウェートでの治験結果を踏まえて、米国での緊急使用許可(EUA)を視野に入れる。「米国でのSC完結も問われている」としており、製剤を念頭に体制整備を行う重要性を訴えた。

 また、これまで治験を行ってきた中等症に加え、「適応拡大の努力も必要」と強調した。「公衆衛生上のニーズはそこだけではない」と続け、軽症、重症のそれぞれを対象に「臨床エビデンスの獲得を進めていきたい」方針だ。

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