富士フイルム子会社の富士フイルム富山化学は16日、抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」(一般名ファビピラビル)について、新型コロナウイルス感染症の効能・効果などを追加する一部変更承認申請を厚生労働省に行ったと発表した。同剤を巡っては、3月末から新型コロナの患者を対象に国内第3相臨床試験(治験)を開始。安全性上の新たな懸念はみられず、アビガンを投与することで症状の改善を早める統計学的有意差が認められたと9月に発表していた。厚生労働省はコロナ薬を迅速に審査する方針を示しており、早ければ年内に承認される可能性がある。

 すでに富士フイルム富山化学は設備の増強や国内外の企業との連携を通じ、アビガンの増産を始めている。3月上旬時点で月4万人分強だった生産能力を段階的に増やし、9月には約7倍の約30万人分を確保する。

 グループ会社の富士フイルム和光純薬の子会社である富士フイルムワコーケミカルの広野工場(福島県広野町)では約10億円を投じてアビガンの原薬製造設備も増強するなど生産能力のさらなる拡大に取り組む考え。11月以降の本格稼働を見据えており、さらに10万人分の上積みを図る方針を示す。

 国内では抗インフルエンザウイルス薬として製造販売承認を取得しているアビガンは、ウイルスのRNAポリメラーゼを選択的に阻害することでウイルスの増殖を防ぐ作用機序を有する。こうしたメカニズムの特徴からインフルエンザウイルスと同種のRNAウイルスである新型コロナウイルスに対しても同様の効果が期待されていた。

 田村憲久厚生労働相は16日の閣議後会見で、富士フイルム富山化学が抗インフルエンザ薬「アビガン」を新型コロナウイルス感染症の治療薬として承認申請したことについて、「緊急事態のなか、なるべく早く(治療薬の実用化が求められる)という状況は認識しているが、承認審査にどれぐらいの期間がかかるかは申請データの内容を精査しないと分からない。安全性と有効性を確認したうえで最終的に承認するかどうかを判断する」と話した。

試読・購読は下記をクリック

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

新型コロナウイルス関連記事一覧へ

ライフイノベーションの最新記事もっと見る