英グラクソ・スミスクライン(GSK)は、新型コロナウイルス感染症に対する治療薬として抗体医薬「オチリマブ(一般名)」の臨床試験を開始した。新型コロナによる重症肺炎を発症している患者800例を対象に実施する。米国などで症例登録を始めた。日本も同試験に参加する予定だ。同剤は関節リウマチ治療薬として開発されていたが、新型コロナ肺炎を引き起こすサイトカインの過剰放出を阻害する作用も期待されている。

 オチリマブは、炎症性サイトカイン「GM-CSF(顆粒球単球コロニー刺激因子)」の働きを阻害する抗体医薬品。GM-CSFは関節リウマチなど自己免疫疾患の発症に関わるサイトカインだが、新型コロナ患者でも増加し、重症肺炎を引き起こす免疫暴走(サイトカインストーム)をもたらすことが最近明らかになった。

 GSKは、オチリマブの投与でGM-CSFを無力化し、新型コロナ肺炎の症状を改善できるか検証する臨床試験を開始した。米国の臨床試験データベースによると、ランダム化二重盲検プラセボ対照の第2相臨床試験として、5月末に症例登録を開始した。肺炎症状があり、酸素吸入療法を必要とする重症患者が対象。約800例を組み入れる。主要評価項目は、28日後の症状改善度(呼吸器不全から回復した患者の割合)。まず米国とスペインで実施する。

 GSK日本法人によると、日本も同試験に参加する予定。試験開始に向けて医薬品医療機器総合機構(PMDA)と協議中で、2、3カ月内に治験入りしたい考え。

 抗GM-CSF抗体はほかの製薬企業も新型コロナ適応の臨床試験を行っている。味の素子会社が製造協力する米ヒューマニジェンの「レンジルマブ」、大日本住友製薬が提携する英ロイバント・サイエンシズ子会社の「ギムシルマブ」、武田薬品工業が導出した英イザナ・バイオサイエンシズの「ナミルマブ」など、少なくとも6成分が開発中。

 GSKは、米ベンチャー企業のヴィル・バイオテクノロジーと提携し、新型コロナウイルスに対する中和抗体を用いた抗体療法も開発する。今夏に臨床試験入りする見込みだが、日本の試験参加は未定。ワクチンも仏サノフィなど複数の企業と提携しているが、日本での開発方針は提携先の意向により決まるという。

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