タイ政府は26日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて非常事態宣言を発令したが、工場の操業は認め化学企業も生産を継続している。ただ、自動車メーカーが一部生産停止を決めた。サプライチェーンの停滞で今後は稼働率が落ち込む可能性が高まっている。
 非常事態宣言の発動で、タイ全土で26日から4月30日まで商業施設の閉鎖が命じられ、外国人の入国も原則禁止となる。一方、製造業の工場運営は認め、化学産業も日系企業を含め生産を継続している。
 1~3月期の化学品の生産量は、昨年すでに米中貿易摩擦の影響などで交易条件が悪化していたこともあり、多くの製品が前年同期とほぼ同じレベルで推移している。タイは4月に仏教暦の正月を祝う「ソンクラーン」休暇があり、第1四半期は製品在庫を積み増す期間であるため、稼働率を維持したとみられる。
 しかし、4月13~15日に予定されていた今年のソンクラーンの祝日は、帰省による新型コロナの感染拡大を防ぐ目的で延期が決定した。
 さらにホンダが26日、アユタヤとプラチンブリの完成車工場での生産を4月末まで停止すると発表。マツダも米フォード・モーターとの合弁生産会社オートアライアンス・タイランドの操業を、30日から10日間休止を決めている。化学・素材メーカーにとって主要供給先の一つである自動車産業で生産停止の動きが広がると打撃は大きくなる。「4月以降の生産量は大幅に悪化する」(在タイ日系化学企業)との見方が強まっている。
 一方、リスク要因の水不足問題は改善されていない。石油化学企業などが集積するラヨン県の貯水池水位は、深刻な水不足が生じた2005年の水準を下回り、今後生産を妨げる恐れがある。
 新型コロナの感染拡大にともなう化学品需要減少と、水不足による減産に備えた在庫確保をどう想定するか。先行きの見通しが一層不透明になるなかで、化学企業各社は工場の操業を続けている。(岩﨑淳一)

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