建設資材の需要動向にコロナ禍が影を落とし始めている。中国での流行が騒がれだした当初から住宅設備の供給遅延で「家が建てられない」といった課題が持ち上がったが、今はほぼ改善しており、4月下旬から現場を閉所していたゼネコンも一部で工事再開の方針が打ち出されている。しかし、戸建て住宅では年間を通して一番の集客時であったはずのゴールデンウィークが“ステイホーム週間”となるなど、新規の受注は厳しい。「住宅ローンを組むのも難しくなる」(建材メーカー首脳)との意見もある。

 新型コロナ流行の初期段階に起こった住設機器の遅延問題は平常化しつつある。一方、ビルなどは4月中旬からゼネコン、準ゼネコンが工事中断に舵を切ったが、ゴールデンウィーク明けから再稼働に踏み出している企業もある。これまでの影響は限定的で3月の塩化ビニル樹脂管の出荷は1・8%減にとどまる。「営業活動は縮小しているが、足元はコロナ禍以前の発注分の残りもある」(塩ビ管材メーカー)。「4月の売り上げは予想以上に好調だった」(グラスウール大手)との声もある。

 ただ、今一番の懸念は今後の住宅需要の落ち込み。本来、年間を通して最も集客できる時期の5月の大型連休が自粛期間となり、年内竣工で節税措置を取ろうとする需要が失われる恐れが強まっている。積水化学工業がウェブ経由を含めて7~9月には集客の正常化を目指すなど、住宅各社はオンラインの提案活動に力を入れるが、どの程度の効果を発揮するかは不透明。金融機関も企業支援に追われるなか、個人融資に割く余裕がない可能性がある。新型コロナの流行以前から景気の落ち込みで新築受注は落ち込んでいたうえ、この状況下で消費マインドの悪化は避けられない。

 押出発泡ポリスチレン断熱材大手は、「現状の出荷は悪くない。ただ、秋以降を懸念する」。YKK APは「4~6月期の国内窓・サッシの売上高は2~3割減を見込み、その先は不透明」と明かす。マグ・イゾベールは「7~12月は当初見通しから15~20%落ちる」と覚悟する。クボタケミックスは「個人案件は厳しくなり、影響が長引けば官需物件の着工遅れ発生や企業の設備投資延期、凍結の可能性がある。下半期以降影響が出るのでは」という。現場発泡ウレタン断熱材大手の日本アクアは「この状況下でできるのは資材のコストダウン。原油、ナフサにだぶつき感があり、危険物倉庫の整備を進めた当社にとって仕入れ面で好機」との意見を述べるが、需要が下がれば売価にも影響するため、必ずしも良い面ばかりではない。

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