横浜市立大学の梁明秀教授らは、新型コロナウイルスの抗原を特異的に検出できる抗体の作製に成功した。新型コロナにのみ反応し、正確性の高い検査法の確立につながる。PCR検査前のスクリーニングなどを想定。抗体は広く企業に提供し試薬・診断薬メーカーとの連携で、短時間で判定可能なイムノクロマト検査キット開発を目指す。
新型コロナウイルスを構成するヌクレオカプシドたんぱく質(NP)を、梁教授の開発した技術で大量に調製。免疫原としてマウスに接種し、NPへのモノクローナル抗体を産生する細胞であるハイブリドーマ144株を樹立した。その後、スクリーニングを行い、新型コロナウイルスだけ反応する抗体を生み出す20株を特定した。
新型コロナの抗体は重症急性呼吸器症候群(SARS)などをベースとし、近縁のコロナウイルスにも反応する課題がある。今回の抗体は新型コロナだけを検出でき、正確性が増す。20株中6株は免疫染色や酵素免疫測定法(ELISA)などにも応用できるという。
抗体の量産は共同研究先の関東化学が担う計画で、非独占的に企業に供給していく。キットのプロトタイプは「2~3カ月でできる」(梁教授)とみている。製品化する上では「感度向上が必要」(同)とし、高感度技術を持つ企業に協力を呼びかけていく考えだ。
梁教授らの研究グループは、3月には血中から新型コロナウイルスの抗ウイルス抗体を検出することにも成功している。関東化学とキット化を進めており、近く研究用として発売する予定だ。