医療従事者を対象とした新型コロナウイルスワクチンの接種が国内でも始まるなか、大学や医療機関で日本人の効果や副反応などを調べるための独自の取り組みが立ち上がってきた。千葉大学は、新設したセンターを通じ検体を収集・解析。国立高度専門医療研究センターも接種後の抗体量変化などを調査していく。三重病院(津市)も副反応を「見える化」するシステムを開発し、インターネット上で公開した。

 千葉大は、新型コロナウイルスワクチンの接種推進と研究を目的とした「コロナワクチンセンター」を2月1日付で設置した。(1)同大附属病院で働く職員と地域医療関係者らへの接種(2)ワクチンの効果・副反応・免疫応答に関する研究(3)正しい情報を伝える啓発活動-の3つが役割。このうち、効果や副反応などの研究は医学部と連携していく計画だ。

 米ファイザーと独ビオンテックが共同開発した新型コロナウイルスワクチンは、医療従事者を対象とした接種開始によって、初めて一定数以上の日本人が受けることになる。そのため、接種対象者のデータを分析することで、どの程度の予防効果が期待できるのか、どのような副反応が生じるのかといったことが日本人でも分かるようになる。さらに結果を示すことで、接種に対する国民の不安感を和らげることにもつながる。厚生労働省も同様の取り組みを進めているが、その範囲が広がればより質の高いデータが得られる。

 そうした観点の下、千葉大は附属病院職員から希望者を募り、効果や副反応を調べる。人数は約1000人を予定。同意取得後、1回目の接種前と2回目の接種後に採取した血液と唾液を使って解析する。また、接種前後での抗体価を測定するほか、一部でリンパ球の機能評価も実施する。

 同大附属病院の横手光太郎院長は「職員2800人中、2600人が接種を希望している」と明かす。3月上旬に約10人が接種し、1週間の経過観察も行っている。一連の取り組みの成果は随時公表していく方針だ。

 国立がん研究センターや国立国際医療研究センター(NCGM)などで構成する国立高度専門医療研究センターも、同様の調査を進める方針を掲げている。6センターの職員約1万人を対象に行っている共同観察研究の枠組みを活用。接種開始後、血清抗体量の変化、発症予防効果の測定などを行っていく。

 病院など医療施設で働く職員が対象となることから、より正確性の高い回答が得られることが見込める。併せて、長期の追跡調査も予定しており、有害事象の有無といった安全性も把握できるようにする。

 津市にある国立病院機構三重病院の場合、実際にワクチン接種した医療従事者から副反応の状況を収集・公開するシステム「COV-Safe(コブセーフ)」の運営を開始した。日本人の安全性に関する情報が限られているなか、より正確な情報をリアルタイムで可視化し、発信していくのが狙いだ。

 無料通信アプリ「LINE(ライン)」を通じて送ったアンケート結果を匿名化した後、データ化し、公表している。主な項目は、接種部位の赤み、腫れ、しこり、痛み、熱さ、かゆみなど。体温の変化や頭痛の有無なども盛り込み、接種後7日分までグラフで分かりやすく提示している。

 すでに350人以上のデータが集まっており、リアルタイムで確認することができる。集めたデータを元に、その時点で判明していることを解説としてまとめてもいる。有効性を調べるために活用していくことも視野に入れる。

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