新型コロナウイルスワクチンの早期開発をめぐり、開発が最終段階を迎えている米国企業が慎重な姿勢を強めている。米ファイザーのアルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)は、コロナワクチンが米大統領選挙の「政争の具」に利用されることを懸念し、「政治的な圧力には屈しない」と表明。米モデルナも、ワクチンの承認申請は最短でも11月後半で、トランプ米大統領が期待する「数週間以内」の実用化は難しいとの見通しを示した。

 9月末に行われた米大統領選のテレビ討論会で、トランプ米大統領が、投票日の11月3日までにコロナワクチンを承認できる可能性を示唆。ファイザーやモデルナなどの名前を挙げ、各社と「話をしている」ことを主張した。これを受けファイザーのブーラCEOはオープンレターを発表、コロナワクチンが「科学的事実よりも政治的な言葉で議論されたことに改めて失望した」とコメントした。

 早期開発の圧力が強まっている一方、承認申請を遅らせることを求める意見も出ている。ブーラCEOは、「私はどちらの選択肢も受け入れられない」と表明。同社が「科学に基づくスピードで動いている」「決して政治的圧力には屈しない」「安全で効果的なワクチンを開発する」ことを強調した。

 ファイザーは、米国などで最大4万4000例規模の第2/3相臨床試験(P2/3)を実施中。この結果が今月中にも判明し、緊急使用許可(EUA)を申請する方針。

 同じくP3段階に進んでいるモデルナは、EUA申請は早くても11月25日以降になるという。目標症例数3万例の半数以上が2回接種を完了し、2カ月間の安全性評価を行った後に申請手続きを判断する方針。先月25日に1万5000例目の被験者が2回目の接種を終えたことから、評価期間は最短でも11月25日までかかる計算だ。

 まずはEUAで限定的に供給し、一般向けの普及は来春になると見ている。来年1月後半以降に通常の薬事申請を行い、承認されるのは最短でも3月後半以降という。

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