中外製薬の奥田修社長は、化学工業日報の取材に応じ、新型コロナウイルス感染症治療薬として期待を集めている同社の抗体医薬「アクテムラ」の増産準備を進めていることを明らかにした。戦略提携先であるスイス・ロシュとも「協議中だ」(奥田社長)と語り、具体的な検討に入った。来月、ロシュが行うグローバル治験の結果が出るのを前に、安定供給体制の構築を急ぐ。

 アクテムラは中外が創製した関節リウマチ治療薬で、ロシュを通じて、世界中に展開している。炎症の原因となるインターロイキン-6(IL-6)と結合し、過剰免疫反応を引き起こすシグナル伝達を抑え込むという作用機序を持つ。

 新型コロナウイルスに感染した患者で生じる肺炎の重症化に有効との報告が出ており、中国では治療指針に盛り込まれている。日本でも5月18日に厚生労働省が公表した「治療の手引き」で適応外使用の治療薬候補の一つとしてアクテムラを挙げている。

 現在、新型コロナウイルス感染症への適応拡大を図り、ロシュは欧米を含めた第3相臨床試験(P3)を実施中。6月中に結果が出る見通しだ。日本でも今月、中外がP3を開始し、年内の承認申請を目指している。

 そのため、足元、「リウマチ患者さんへの影響はない」(同)ものの、今後の需要増を見越した対応が必要だと判断した。ロシュが供給能力を引き上げる考えを示していることもあり、原薬、製剤ともに手がける中外としても、「早めの準備をしていく」(同)こととする。(吉水暁)

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