臨床検査薬大手が新型コロナウイルス感染症で重症度を見分ける診断薬を投入し始めている。コロナ患者の多くが軽快する一方、呼吸困難や臓器不全を経て亡くなる患者もいる。ロシュ・ダイアグノスティックス(東京都)は治療に人工呼吸器が必要かを判断する検査薬を研究用として販売開始し、薬事承認も目指す。シスメックスも重症度予測の受託解析サービスを今月から始める予定だ。

 新型コロナウイルスに感染すると、細胞は炎症性サイトカインと呼ぶたんぱく質を放出する免疫応答を始める。重症化した患者に多く見られるのはこのサイトカインが過剰に反応する「サイトカインストーム」。呼吸困難や免疫系の破綻、多臓器不全と進展する恐れがある。

 ロシュ・ダイアグノスティックスはサイトカインの一つ「インターロイキン6(IL-6)」の研究用試薬の販売を始めた。人工呼吸器の挿管が必要か判断するのに用いる。親会社ロシュ(スイス)は米国食品薬品局(FDA)の緊急使用許可を先週取得。日本でも体外診断薬として承認取得を計画する。

 血液中のIL-6を電気化学発光法という独自の測定原理を用いて調べる。分析装置「コバス」は日本で民間検査センターや大学病院に約1500台が稼働中。検査結果を約18分で得られる。医療現場で即座に検査でき、いち早く治療指針の判断に生かせる。

 ロシュやロシュグループの中外製薬はIL-6の働きを抑える抗体医薬「アクテムラ」を新型コロナの治療薬として開発を進める。検査薬から治療薬まで一貫して手がける狙いもありそう。

 シスメックスは8種類のサイトカインを同時に調べられる検査パネルを開発し、研究用として解析サービスを6月に始める予定。化学発光法を用いた全自動免疫測定装置「HISCL」でサイトカインの量などを調べて重症度の予測に役立てる。

 同社では新型コロナの合併症として起きる血栓症や敗血症の検査、PCR検査も組み合わせることで、治療初期から重症度、経過観察、退院まで一連の検査技術を提供する方針。

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