「ポストコロナ社会」を見据え、社会課題解決に資する製品開発を加速する日本ペイントホールディングス(HD)。5月に東京大学と包括的な産学協創協定を締結し、10月からは社会連携講座の開講で共同研究・人材交流を推進する。多彩なテーマを掲げるなか、田中正明社長が「最優先課題」と位置づけるのは塗料・コーティング分野における抗ウイルス技術の深化。グループ内で新たに立ち上げた専門チームを管掌する喜田益夫常務執行役(日本ペイント社長)に今後の展望を聞いた。

 ◇

 - 抗ウイルス製品開発専門チームの概要は。

 「汎用・自動車用・工業用など各事業会社から9人のR&D人材を集め、5月に『商品開発室』を発足させた。30代の中堅を中心に、キャリアと柔軟性・行動性を両立したメンバーを選抜。同分野の製品開発は緊急度が高いため、集中して取り組んでいく」

 - タイムスパンの認識は。

 「国内でいえば、最近まで続いた感染拡大期が第1期にあたる。重視すべきはCOVID-19向けワクチン流通までの1年ほどの期間で、これを第2期と捉える。今回の『ニューノーマル(新常態)』の導入期であり、第2波・第3波襲来に対するリスク管理と経済活動を両立する必要がある」

 - ニーズ探索の方向性は。

 「すでに連休明けから、水性エマルジョン塗料を求める顧客に抗ウイルス性建築内装塗料『ニッペ パーフェクトインテリア エアークリーン』を推奨し始めた。すでにクラスター感染源となり得る病院・学校・ホテルなどでの採用が進展。これら物件だけでなく、リテール領域を深耕するためハウスメーカーなどへの攻勢を強める」

 「電機分野でも『ハイタッチサーフェイス』(高頻度で接触する表面)への機能付与が求められ、ディスプレイ表面などにニーズが広がる。カーシェアリングなど新しいシーンへの対応も必要だ」

 - 現状の開発動向は。

 「エアークリーンに続く製品開発が喫緊の課題で、抗ウイルス機能のDIY塗料への導入などが有力だろう。同分野は在宅勤務の浸透にともなう可処分時間の増大で急伸しており、国内外とも有望市場とみる」

 「塗料・コーティング分野での抗ウイルス機能は光触媒・漆喰・塩素系薬剤によるものの3系統があるが、すでにエアークリーンで光触媒の可視光応答を実現。建築内装用途に道を拓き、可視光応答型では数少ない光触媒工業会(PIAJ)認証品ともなった」

 「人体に対する安全性や長期の効果持続などの性能から、当面は光触媒をベースとした要素の複合が基幹となる。従来はセルフクリーニング・消臭などの作用で注目されてきた技術だが、これを機にテーマの重心が移行したといえる。今後は塗料・コーティング剤以外の方策を含め、①表面への付着後の除去②付着防止③室内への侵入防止-の3つを開発の方向性としていく。その過程で他企業との連携も考えられ、進歩的な製品を投入できると期待する」(兼子卓士)

試読・購読は下記をクリック

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

新型コロナウイルス関連記事一覧へ

インタビューの最新記事もっと見る