米メルクが開発した新型コロナウイルス感染症治療薬「モルヌピラビル」が特例承認された。製品名は「ラゲブリオ」。海外では有効性不足を指摘する声もあるが、日本では軽症患者に対する新たな治療選択肢として有用性はあると判断した。自宅療養者でも服用しやすい飲み薬が日本でも使えるようになる。

 投与対象は重症化リスクがある18歳以上の軽症~中等症患者。1日2回、5日間服用。動物実験で胎児毒性が報告されているため妊婦の服用は禁忌。食事制限や腎機能・肝機能障害に対する用量制限はない。自宅療養者の場合、診断した医療機関が特定の薬局へ処方箋を発行し、薬局から患者の自宅などへ配送される。

 欧米などでも使用許可が出たが、同剤の有効性をめぐる評価は分かれている。薬事申請時の臨床試験データは重症化リスクを半減させる中間結果だったが、最終結果では3割減にとどまった。承認審議した厚生労働省の専門家部会では中間、最終データ両方を総合的に評価し、「有効性が否定されるものではない」として承認了承された。

 流通開始にあたり、情報提供体制も強化する。メルク日本法人のMSDは、杏林製薬と共同で国内の情報提供活動を展開することで合意。共同販促開始に向けて、プロモーション・フィーなど詳細な契約内容を協議する。当面は政府が買い上げた製品が医療現場に供給されるため、通常の医薬品のように薬価収載して販売される予定は今のところない。だがコロナ治療薬として特別な対応が必要なため、対象となる患者や安全性情報などを医師らと確認しながら適正使用を推進する。

試読・購読は下記をクリック

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

新型コロナウイルス関連記事一覧へ

ライフイノベーションの最新記事もっと見る