東レリサーチセンター(東京都中央区)は、新型コロナウイルス対策関連の分析を支援するサービスの提案に力を入れる。高濃度エタノール製品の含有量分析のほか、マスクや防護服といった不織布製品は3次元解析や定量解析を提供。ほかにも診断薬や検査キット、ワクチンなどの開発支援や、抗ウイルス薬の研究には高品質な修飾ペプチド合成サービスを通じて取り組みを後押しする。新型コロナの感染拡大が続くなか、幅広いサービスや高い技術力を武器に顧客企業からの相談に応える。

 手指消毒用エタノールが不足する状況を踏まえ、厚生労働省は3月下旬に一定の条件のもとで他の高濃度エタノール製品の代替使用を認めた。東レリサーチセンターでは高精度のガスクロマトグラフィーといった装置を使い、度数やメタノールが含まれないなど要件の確認に必要な高濃度エタノール製品の分析サービスを揃える。

 世界的な感染拡大で医療従事者が使うマスクや防護服の不足が深刻化しており、各社はその原料となる不織布繊維の生産拡大を急いでいる。これに対し、X線CTや3次元計測走査電子顕微鏡(3D-SEM)、TEMトモグラフィーなどを用いて取得した繊維の3次元観察データについて太さや断面形状だけでなく、さまざまなパラメーターの定量解析によって特性との相関を調べるサービスを展開する。

 診断薬や検査キット、ワクチンの迅速な開発に向けては、診断薬原料やワクチンに含まれるたんぱく質の構造、物理化学的性質の確認などを請け負う。

 ペプチドは標的分子への結合能の高さからウイルスの感染過程を阻害する抗ウイルス薬として注目されている。ファージディスプレイ法などでウイルス感染に関連するたんぱく質や糖鎖に相互作用するペプチドも見いだされるなか、これらのペプチドに環化や非天然アミノ酸への置換などの修飾を施すことで、さらに結合能や安定性を向上させることができる。

 こうした修飾ペプチドの合成を得意とする同社では、非天然アミノ酸含有ペプチドや環状ペプチド合成の豊富な実績を持つ。神奈川県内に構える自社の研究部門で合成しているため、高品質なペプチドをスピーディーに供給できる体制も整える。

 東レリサーチセンターは、東レの研究開発部門から独立するかたちで1978年に発足した。研究開発や生産技術における新たな機能の創出や課題解決といった要請に対し、分析や物性解析による技術支援を手がけている。2019年3月期の売上高は82億円だった。

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