東レ・デュポンは19日、ポリエステル系熱可塑性エラストマー「ハイトレル」で、新型コロナウイルスに対する不活化効果をもたらす特殊グレードを開発したと発表した。一般的なプラスチックでは表面にウイルスが付着してから4日間ほど活性が続くが、開発品では付着後約6時間でウイルスを99・9%不活化した。添加剤の練り込みや後加工ではなく、樹脂の組成そのものが抗ウイルス性を示す構造になっているという。同日開催したオンライン会見で「ポリマーの構造の組み合わせと配合のバランスという点で、抗ウイルス性を最大限に発現させるための最適化を行った」(同社)と説明した。

 ハイトレルはゴム弾性を持ちつつ、エンジニアリングプラスチックの高機能性も併せ持つのが特徴。これまでも練り込み技術やコーティング剤、光触媒などによって抗ウイルス性を持つ樹脂製品はあったが、製造コストや耐久性、発色性などで課題があった。広島大学大学院医系科学研究科ウイルス学研究室の坂口剛正教授との共同研究により、短期間でウイルスの不活化を実現させる特殊グレードを開発。既存の特性を損なうことなく、成形品でウイルスの不活化を確認した。抗ウイルス効果について「ポリマーそのものの機能なので、理論的には持続性は永久にある」(同)との考えを示す。

 一部サンプルワークを実施しており、商業化の際には売上高10億円を視野に入れる。製造は親会社の東レの愛媛工場(愛媛県伊予郡)に委託。既存の柔軟性、良触感と新型コロナウイルス不活化特性を生かし、カーシェアリングを想定した自動車の内装部材やスイッチ、公共施設やオフィス、介護現場でのドアノブ、手すり、防護服などさまざまな用途で提案する。

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

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