新型コロナウイルス感染症による医療崩壊を防ぐには、重症度や緊急度に応じた層別化が重要-。横浜市立大学の竹内一郎主任教授は、同大がこのほど開催した会見でこう訴えた。1月からコロナに向き合ってきた教訓を踏まえ、患者が増えるなか、「集中治療ベッドをどう守るかが大切」と強調。解決策の一つとして重症化予測マーカー実用化に取り組んでいることも明らかにした。

 竹内教授は、医療崩壊について「すべての患者が殺到し、通常医療もできなくなり、結果、死亡者が増えてしまうこと」と定義。現場を預かる立場から「コロナ患者と、心筋梗塞や交通事故など通常の救急の両立が必要だ」とした。そのうえで、これまでの経験に基づき、「軽症者は自宅、中等者は病院、重症者は集中治療室といった層別化が欠かせない」と指摘した。

 医療崩壊防止に向けた対策として掲げたのは、(1)地域を越えたネットワーク構築(2)より精度の高い層別化の社会実装-の2つ。まずネットワーク構築に関しては、とくに意識障害を起こしているなどの重症患者を広域で集約化していく重要性を示した。すでに体外式膜型人工肺(ECMO)装着下でも患者搬送可能な専用救急車「エクモカー」を使い、横須賀市立市民病院と連携体制を整えたことも説明した。

 より精度の高い層別化を目指した取り組みでは、「重症度や病態を予測できるバイオマーカー探索を進めている」。目下、炎症の原因となる「インターロイキン-6(IL-6)が指標にはよい」と結論。医療現場で実用性の高いマーカーを開発していく。

 患者から採取した血液を分析し、スマートフォンなどに搭載したアプリによって「30分という短時間で結果が分かるのが理想型」。同様のバイオマーカー候補は続々と出ているが、例えば半日など「時間がかかるのが難点。救急現場では迅速さが求められる」と力を込める。入院患者の予後の追跡、臨床データの蓄積を行い、IL-6のマーカーとしての有用性など検証を急ぐ構えだ。

 横浜市大高度救命救急センターのセンター長でもある竹内教授は、同市のコロナ対策本部で医療責任者を務めるなどしている。年明け以降、中国・武漢市(湖北省)からの帰国者、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」乗船者への対応に当たるなど豊富な実績を持ち、現在も横浜市大2病院で同感染症患者の受け入れを行っている。

試読・購読は下記をクリック

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

新型コロナウイルス関連記事一覧へ

ライフイノベーションの最新記事もっと見る