理化学研究所の研究グループは、季節性コロナウイルス(風邪)に対する記憶免疫キラーT細胞が新型コロナウイルスにも反応することを突き止めた。キラーT細胞は一度感染したウイルス(抗原)を記憶、そのウイルスが再び侵入した際に抗原の配列の一部(エピトープ)を認識して感染細胞を攻撃する。今回、新型コロナウイルス・エピトープ「QYIペプチド」が季節性コロナウイルス・エピトープと高い相同性があった。また、季節性コロナウイルス記憶免疫キラーT細胞が新型コロナウイルスによって誘導される効率は健常者は高く、造血器腫瘍患者は極めて低かった。新型コロナウイルス感染症の診断、治療につながる新たな知見となることが期待される。

 これは理研の清水佳奈子上級研究員、藤井眞一郎チームリーダーらの研究成果。ブレークスルー感染や重症化の予防の指標や記憶免疫キラーT細胞を新型コロナウイルスが誘導するキラーT細胞型ワクチンなどの開発への貢献が期待される。

 重要な免疫機構の担い手であるキラーT細胞は感染を防げなかった場合に発動。生命を危険にさらすウイルス感染細胞、がん細胞、異物などを個別に記憶して特異的に傷害活性を示すキラーT細胞も存在する。

 今回、日本人に多いタイプのヒト白血球型抗原(HLA)と親和性が高い新型コロナウイルスのエピトープを新型コロナウイルス感染細胞を用いて絞り込んだ。具体的にはがんに対するT細胞評価系を改良、新型コロナウイルスに対する解析系を樹立。これをヒトのほぼすべての細胞が持つHLAに適用した。

 季節性コロナウイルス記憶免疫キラーT細胞の特定した新型コロナウイルスQYIペプチドに対する反応性(誘導効率)は健常者では18人中15人(83・3%)となった。白血病や悪性リンパ腫などの造血器腫瘍患者では27人中4人(14・8%)と低かった。

 ただスパイクたんぱく質領域に存在するQYIペプチドを含めた周辺領域「ホットスポット」では健常者は100%、造血器腫瘍患者でも65%に上昇することも解った。

試読・購読は下記をクリック

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

新型コロナウイルス関連記事一覧へ

ライフイノベーションの最新記事もっと見る