三菱ケミカルホールディングスグループの生命科学インスティテュート(LSII)は20日、再生医療製品「Muse(ミューズ)細胞」で新型コロナウイルス感染症を治療する治験を始めると発表した。コロナ患者の5%程度に起きる急性呼吸不全を対象に5月に開始。死亡率を下げる有効性を確認できれば承認を申請する計画。患者が人工呼吸器管理から早く回復できれば、医療体制が逼迫する事態も避けられる。

 ミューズ細胞は東北大学の出澤真理教授らが発見した幹細胞で、様々な組織や細胞に分化する多能性がある。点滴投与すると血管を通じ障害部位に集まり、その場に必要な組織に分化して修復する。急性心筋梗塞や脳梗塞など6つの疾患で治験が進んでいて安全性の問題は報告されていない。

 コロナの治験は「急性呼吸窮迫症候群(ARDS)」と呼ぶ、急性呼吸不全の患者43人を対象に行う。既存のコロナ薬に追加してミューズ細胞か偽薬を投与し、投与4週間後の死亡率を評価指標に有効性を検証する。成績次第で承認申請に持ち込める試験デザインを採用しており、早期の実用化を目指す。

 コロナ治療に細胞を用いる治験は、ロート製薬やベンチャーのヘリオスなども実施中で、いずれも間葉系幹細胞(MSC)を応用している。LSIIは、ミューズ細胞の動物実験でMSCを上回る肺機能の改善効果などを確認した。死亡率の低下だけでなく、人工呼吸器管理からの早期離脱や体外式膜型人工肺(ECMO)の使用減を通じ、医療体制の逼迫を避けられる効果も期待できる。

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