神戸大学の亀岡正典教授らは、新型コロナウイルスに対する安全な創薬スクリーニング系を構築した。「レプリコン」と呼ばれる感染性はない一方、自己増殖可能なウイルス遺伝子を活用。高度な病原体封じ込め施設でなくても扱えるようにした。治療薬の一つであるレムデシビルを投与すると増殖を阻害、同等性があることも確認できた。

 新型コロナウイルス感染症の治療薬を開発するには、スクリーニングに際して同ウイルスを実際に使うことが欠かせない。だが、その病原性・感染性の高さから、高度な病原体封じ込め設備を持つ施設でしか取り扱うことができないほか数に限りがあるため、治療薬の開発を迅速に進めるうえでの障害になっているとの指摘もある。

 そうした課題を踏まえ、研究グループは安全性の高いスクリーニング系の構築を図った。ウイルスの遺伝子のうち、増殖に関する部分は残しつつ、粒子形成に関する遺伝子を欠損させることで感染性をなくしたレプリコンを作成した。また、レポーター遺伝子を導入することで、レプリコンの増殖を発光によって簡便に測定できるようにもした。

 感染性がないことから、高度な病原体封じ込め施設でなくても、新型コロナウイルスの治療薬開発を進めることが可能だ。ただ、大量の検体を用いたスクリーニングには適していないのが現状では課題だとしており、大規模化できるようにするための改良を加える方針。

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