米ギリアド・サイエンシズの抗ウイルス剤「レムデシビル」が世界初の新型コロナウイルス治療薬に近付いた。同社が29日(米国時間)に公表した治験結果は、重症患者約400人のうち半数以上が2週間以内に退院できるレベルに症状が回復した。同剤を5、10日間投与するグループに分けて実施し、5日間でも十分な有効性が示唆された。米国立衛生研究所(NIH)の別の治験でもプラセボ(偽薬)と比較し主要評価項目を達成。いずれの治験も日本の患者を含んでいる。早期承認に向けて薬事申請に進められるか、米国食品医薬品局(FDA)などとの協議が本格化しそうだ。

 日本では安倍晋三首相が4月27日の国会でレムデシビルについて「間もなく薬事承認が可能となる」と語った。海外で承認されたことなどを条件に承認審査の手続きを簡略化する「特例承認」を適用する方向だ。

 ギリアドは新型コロナウイルス感染症の重症、中等症患者をそれぞれ対象とする第3相臨床試験のうち、重症患者の試験の速報値を発表した。レムデシビルを5日間(200例)、10日間(197例)投与するグループに分けて行い、投与開始から2週間以内に退院できた患者の割合は、5日投与群が60%、10日投与群が52%。症状改善が認められた患者割合は5日投与群が65%、10日投与群が54%だった。

 症状改善の効果を5日間と短期投与で得られることが示されたのが今回の結果のもう一つの意義だ。ギリアドが計画するレムデシビルの世界全体の供給量は5月末に14万症例分、20年末に150万症例分。投薬日数を少なくできれば、その分多くの患者を治療できる。

 治験では、発症から早期段階で投与を始めるほうが治療効果が高いことも示唆された。安全性評価では、グレード3以上の副作用が約5%(18例)で認められたほか、吐き気(5日投与で10%)急性呼吸不全(同6%)などの副作用が報告された。

 ギリアドは第3相試験に最終的に計6000人を組み入れる。中等症患者の試験結果は、最初の600人分のデータとして5月末に発表予定。NIH主導の国際第3相試験も良好なデータが得られそうだ。ギリアドは、この試験で主要評価項目が達成されたことも公表した。具体的なデータは未公表だが、主要評価項目は症状回復までの日数と設定されている。

 同試験はプラセボ投与と直接比較するランダム化二重盲検試験。プラセボと有意差のある有効性が示され、新たな副作用が出なければ、レムデシビルが米国などで早期承認される可能性が一段と高まりそうだ。

 ただ、中国で治験を行っていた同国の研究グループは、明確な有効性の差がなかったと発表しており、異なる判断を下している。

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