臨床検査薬や画像診断装置を手がける米ホロジックは日本で、新型コロナウイルスの遺伝子検査薬の拡販に乗り出す。米サンディエゴ拠点に5000万ドルを投じて生産能力を拡大し、検査キットの日本への供給量を現状の3倍以上の月15万~20万テスト分に増やす。専用の全自動検査装置はコロナ流行前の累計販売台数の数倍を目指す。流行が収束しても検査需要は高水準で定着するとみており、日本の遺伝子検査市場でシェアを広げる。

 ホロジックのコロナ検査薬は「TMA法」と呼ぶ独自の核酸増幅技術を使う。細胞一つに1個存在するDNAの遺伝子ではなく、数千存在するRNAの遺伝子を等温で増幅させて検出する。米ネバダ大の研究ではPCR検査で結果保留となった検体を判定できる成果が得られた。コロナウイルスに特徴的な遺伝子配列を標的に検出するため、変異による偽陰性のリスクも減らせる。

 日本法人のホロジックジャパン(東京都文京区)が6月に研究用試薬として発売し、8月に体外診断薬(IVD)として承認を取得した。PCR検査と同じ位置付けで使われ、PCRやTMAなどを含めた核酸増幅検査ですでにシェア8%を握るという。米国ではシェア30%に広がっており、増強やIVD承認をきかっけに日本でも「シェア30%を目標に据える」(ダイアグノスティックソリューションズ事業部)。

 米ホロジックの世界売上高は3400億円(19年)と中堅だが、重点領域の子宮頸がんや乳がんといった女性疾患向けの診断では世界大手だ。子宮頸がんの診断では原因ウイルスを検出する全自動遺伝子検査装置「パンサーシステム」と細胞診を組み合わせた診断技術を展開。コロナ向けにもパンサーシステムを軸にした完全自動の検査手法を応用したところ、世界で採用が拡大している。

 ホロジック日本法人がコロナ前までの8年間で販売したパンサーシステムは三十数台で、コロナ需要でこの数倍の販売を1年間で見込む。米本社は500台の世界販売を計画している。コロナ禍で乳がんなどの検診需要が落ち込んだ影響を、コロナ検査薬・装置の拡販で補うねらいだ。

 パンサーシステムのスペックは、大量検査に向くスイス・ロシュなどの大型装置と日本では東ソーや栄研化学などが手がける小型自動装置の中間に位置する。核酸抽出から試薬調整、増幅、結果確認を全自動で3・5時間で行える。設置面積は約1平方メートルと小型でありながら1日1020テストと処理能力に優れ、検体が届けば随時検査できる。

 鼻の奥から検体を採取する綿棒と検体を保管する専用容器もキット化し、検体採取時にウイルスを不活化することで二次感染リスクを減らせる工夫もした。全自動のため検査担当者が検体に触れる機会も少ない。コロナ検査需要の拡大で処理能力を高めたい大手から中規模の臨床検査センターや自治体の検査機関を中心に装置の採用が増える見通し。足元の販売数は45台に拡大している。

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