米メルクはこのほど、開発中の新型コロナウイルス感染症治療薬「モルヌピラビル」を日本向けに約160万回分(160万人分)供給することで政府と合意したと発表した。約12億ドル(1370億円)で政府が買い上げる。同剤は近く日本でもメルク日本法人のMSDが承認申請予定で、承認後の安定供給に備える。

 政府は迅速審査する意向で、年内の実用化を目指している。岸田文雄首相は同日夜の記者会見で、「まず速やかに60万回分を医療現場に提供する。さらに100万回分を確保した」と述べた。承認された場合、年内にまず20万回分、来年2、3月にそれぞれ20万回分ずつ納入される予定。

 同剤はウイルスの複製に必要な酵素「RNAポリメラーゼ」の働きを阻害する化合物。重症化リスクがある軽症~中等症患者を対象に行った臨床試験では、重症化リスクを半減させる中間結果を得た。このデータを基に欧米などで申請し、先ごろ英国で世界初承認された。軽症患者が自宅でも服用しやすい初めての飲み薬。臨床試験は、1日2回で5日間服用する用法で行った。

 メルクは年内に1000万回分、来年は2000万回分以上を生産する予定。米国向けにはまず310万回分、英国には48万分供給する契約を結んだ。途上国には医薬品特許プールを通じて低価格で供給する。

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