米イーライリリーが開発した新型コロナウイルス感染症治療薬「バムラニビマブ」について、製造上の不正行為が指摘されている。同剤の製造工場で不適切な品質管理や文書改ざんが行われた疑いが浮上し、米司法当局が捜査に乗り出した。別の製造拠点でもGMP違反が指摘され、米国食品医薬品局(FDA)がワーニングレター(警告文)を出した。また、変異株に対する有効性が見込めないとして、米国で同剤などの使用を中止する州が増えている。
 バムラニビマブの原薬を製造しているブランチバーグ工場(ニュージャージー州)に対して先月、不適切な製造管理を指摘する内部告発が報じられた。米当局に提出する調査文書の改ざんを上層部が指示したとされる。米司法省がリリーに対して文書の提出を求める召喚状を発行し、同社も受け取りを認めた。文書の内容は明らかにしていない。
 同剤の充填・包装を行うインディアナポリス工場でも問題が指摘されている。FDAの査察でcGMP違反が発覚し、今年3月にFDAが警告文を出した。
 製造上の問題とは別に、バムラニビマブの米国内の需要は減っている。同剤はコロナ回復者由来の中和抗体。もう一つの抗体と組み合わせて投与する治療法が米国で緊急使用許可されている。だが南アフリカ、ブラジル型の変異株に対する効果が見込めないとして、両変異株が流行している州では供給が停止され、米リジェネロン製などの他社品に切り替えられている。

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