治験の受託など医薬品開発支援(CRO)を行う各社が、新型コロナウイルスのワクチン接種を支援するサービスを拡大している。シミックホールディングス(HD)は、同社の電子お薬手帳を使い、効率よく接種管理ができるサービスを提供。EPSHDも自治体向けに、円滑なワクチン接種ができる体制構築支援に乗り出した。CROでの競争が激化するなか、収益化の可能性を探る。

 支援の一環として、シミックはさまざまなサービスを行っているが、柱となるのが、同社の電子お薬手帳「harmo(ハルモ)」。接種会場にあるタブレットとバーコードリーダー、そしてハルモを連携することで、スマートフォン上で接種履歴などを確認できるようにする。

 例えば、米モデルナ製のワクチンの場合、2回接種が必要だが、その間隔を間違ってしまう恐れがある。スマホ搭載アプリを通じ、ハルモと連携すれば、接種記録などをオンライン上で確認でき、間違いが防げる。また、ワクチンのロット番号も記録できることから製品不良が発生した時の追跡も容易だ。

 現在、自治体向けとして実績を重ねているが、6月に始まった職域接種向けへの提案にも本腰を入れている。併せて、副反応相談を担当するコールセンター事業の受託も行っている。

 EPSもワクチン接種支援事業を展開中だ。第1弾として、土浦市(茨城県)で接種サポートを進めている。同市と締結した包括連携協定の一環で、看護師や臨床検査技師、薬剤師などの紹介・派遣を軸に取り組みを進めている。土浦市だけでなく、他の自治体からも「要望があればグループとして対応していきたい」(長岡達磨社長)方針。

 治験支援サービスを手がけるエムスリーも、「職域接種まるっとサポート」プランの提供を始めた。グループで有する医療従事者派遣サービスなどを活用。接種を担う医師らの確保から会場の運営までワンストップで請け負う。自治体向けで蓄積したノウハウを活用していく。

 CRO各社でこうした取り組みが相次ぐ背景には、社会貢献に加えて、事業多角化を進めていることがある。国内CRO間の競争激化から、各社は新たな収益源確保に向けて、新規領域の開拓に力を注いでいる。そうしたなか、治験受託事業で培った経験や治験を生かせると判断し、名乗りを上げた格好だ。

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