英グラクソ・スミスクライン(GSK)は、新型コロナウイルス感染症に対する抗体医薬について、日本で開発に着手した。コロナ回復者由来の中和抗体で、二重の抗ウイルス作用を持つ。海外の臨床試験で軽症~中等症の患者に対する効果を確認し、最近増えている変異株にも有効な可能性があるという。米国で緊急使用許可(EUA)を申請したところで、海外の進捗を見ながら日本への早期導入を目指す。

 GSKは米ヴィア・バイオテクノロジーと提携し、コロナ感染症に対する抗体医薬「VIR-7831」を開発。同様の抗体医薬は他の欧米製薬も開発しているが、7831の特徴は、ウイルスに対する中和活性だけでなく、感染した細胞を除去するエフェクター機能も備えていること。

 GSKでコロナ治療薬を担当しているデイヴィッド・ブルックス・バイスプレジデント(グローバルメディカルアフェアーズ)によると、同剤は、今回流行している新型コロナウイルスと、2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)のウイルスに共通した抗原部位に結合する。このため、抗体が効かなくなる「エスケープ変異」が生じにくい。非臨床の実験データでは、英国、ブラジル、南アフリカなどで増えている各変異株に対する効果も確認したという。

 まずは軽症~中等症患者のうち、高齢者や基礎疾患があるハイリスク患者に対する治療薬として実用化する。これらの患者約1300人を対象に行った海外第3相臨床試験(P3)では、重症化・死亡のリスクを85%低下させる結果を得た。このデータを根拠に先月、米国でEUAを申請。予防効果を検証する臨床試験も計画している。米国申請したのは点滴で投与する静注製剤だが、シリンジで筋肉内注射する製剤も開発中。T細胞のエフェクター機能を高めたもう一つの中和抗体(VIR-7832)も開発している。

 日本は海外治験に参加していないが、国内導入に向けて検討を始めた。臨床試験の実施方法や時期は非開示だが、「海外と連携しながら日本でもいち早く届けられるよう準備している」(GSK日本法人の張家銘氏)という。

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