石油化学工業協会は23日、2020年3月の主要な石油化学製品の生産・出荷実績を公表した。低密度ポリエチレン(LDPE)など4大樹脂の国内出荷は新型コロナウイルスの感染拡大による個人消費の落ち込みや需要家の工場停止などの影響を受けて、LDPEと高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)が前年割れとなった。

 エチレンの生産量は前年同月比19・3%減の45万3600トン。国内エチレン設備の稼働率は88・7%で、13年11月以来6年4カ月ぶりに好不況の目安となる90%を下回った。

 3月は定期修理中のエチレン設備が前年同月のゼロに対し、今年はJXTGエネルギー川崎製造所(川崎市)と東ソー四日市事業所(三重県四日市市)の2基で生産量を押し下げた。一方で、稼働率が90%を割った要因は需要の減少だ。昨年来の米中貿易摩擦や中国経済の減速に新型コロナの感染拡大が重なり、石化製品の需要減に追い打ちをかけている。

 4大樹脂の国内出荷をみると、LDPEとHDPEはそれぞれ7%減、3%減となった。食品包装資材やレジ袋などのフィルム用途の出荷が低調で、新型コロナの感染拡大にともなう個人消費の落ち込みが響いたとみられる。PPも2%減で、自動車部品などに使われる射出成形用途で需要家の操業停止といった影響が表れはじめたようだ。一方、ポリスチレン(PS)は6%増。外出自粛にともなう「巣ごもり需要」による食品包装向けの伸びなどがあって前年を上回った。

 4大樹脂の生産量はLDPEが19%減、HDPEが36%減、PPが12%減、PSは1%増だった。LDPE、HDPE、PPが2ケタ減に沈んだのは定期修理もあるが、高水準の在庫と需要低迷に直面するなかで各社が在庫を切り崩すために生産調整を行った影響もあるようだ。その結果、在庫水準はLDPE、PSはいぜん高い状態が続くも、HDPEとPPはほぼ適正水準に回復した。

 19年度のエチレン生産量は前年度比1・6%増の628万2300トン。19年度は前年度に比べエチレン設備の定期修理が少なく増産要因となった一方で、台風や米中貿易摩擦、新型コロナの影響で実質フル稼働水準の95%や90%を下回る月があった。19年度の平均稼働率は94・2%で、15年度以来4年ぶりの95%割れとなった。

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